国際情報

中国で冤罪事件急増 法治より人治重視の共産党体質が背景に

 中国では最近、死刑判決が覆り無罪になるなど、冤罪事件が急増している。警察や検察が検挙率を上げようとするあまり、ずさんな捜査や容疑者への拷問が頻繁に行なわれていることが背景にある。また共産党政権が法治よりも党による支配や人治を重視していることも冤罪を生んでいる。

 福建省福州市で2006年8月、露天商の念斌氏が知り合いの子供2人を毒殺した容疑で逮捕された。念氏は獄中で無罪を訴えたが、福州市の高等裁判所は死刑判決を下した。

 それでも、念氏の父母は無罪を信じて、弁護士を雇い、念氏が事件当時、殺人現場近くにいなかったことを立証したため、念氏は逮捕から8年後の今年8月、冤罪であることが証明され、再審で無罪判決を勝ち取った。

 また、広東省広州市では窃盗などの疑いで逮捕された白春容さん(女性)が1989年7月、裁判で懲役8年の実刑判決を受けた。白さんは服役中、一貫して無実を訴えたが、裁判所は聞く耳を持たず、白さんは1996年に懲役8年の刑期を終えて出所した。

 その後、白さんは自身の無罪を証明しようと、弁護士や両親とともに、さまざまな証拠を集め、再審にこぎ着け、事件発生から25年も経った今年9月、ついに無罪を勝ち取った。白さんには賠償金として65万元(約1100万円)が支払われた。

 この2つの事件ではいずれも取り調べに当たった警察側が物的証拠もないのに念さんと白さんを拷問し、嘘の自供を引き出したことが分かっている。また、検察側も検挙率を上げるため、警察の捜査を全面的に採用していた。

 中国ではここ数年、念さんらのように、冤罪が証明されるケースが増えている。昨年も、女性タクシー運転手を殺したとして服役中だった5人の男性が無罪だったことが証明され、逮捕から18年後に釈放された。これは、このタクシー運転手を殺した別の男3人が逮捕され、裁判で執行猶予つき死刑判決などが下ったためだ。

 この5人の男たちの弁護士は「紅顔の青年として獄に入り、中年のおじさんになって獄から出てきた」と述べて、貴重な18年の歳月が失われたことを嘆いた。

 中国共産党は10月下旬、「法治」をテーマに中央委員会総会を開き、今後は法制度を強化する方針を確認したが、これについて、中国問題に詳しいジャーナリスト、相馬勝氏は「いくら党中央委員会総会で法治を強調しても、共産党の体質が変わらなければ、冤罪事件は増え続けることになる」と警告する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン