11月4日の中間選挙で民主党は上下両院で敗れ、オバマ大統領のレイムダック化が鮮明になった。そんな中、負けたはずなのに上機嫌なのが2年後の大統領選出馬を目指すヒラリー・クリントン前国務長官だ。
苦戦を強いられた民主党候補たちは、不人気のオバマ大統領と距離を置きヒラリー氏の応援を求めた。同行取材したABCテレビのリズ・クラウツ記者が語る。
「応援に駆けつけたのは民主党候補が危ない25州。各地では選挙資金集めのディナーが開かれ、夫婦で訪れたサンフランシスコでは140万ドル、ハリウッドでは210万ドルを一晩で集めた」
応援の甲斐なく民主党候補たちは敗れたが、大統領選に向けて財布は十分に厚くなったようだ。
正式出馬発表も近づいている。米大手紙のベテラン政治記者がいう。
「ヒラリー支持派には年内に出馬宣言して一気に民主党予備選の主導権を握ろうという意見もあるが、夫のクリントン元大統領と立ち上げた財団主催の講演は数か月先まで埋まっている。出馬宣言は来年2月10日頃になるだろう」
知名度でも資金力でも他の候補を大きくリードするヒラリー氏の対抗馬は誰か。民主党リベラル派は中道路線のヒラリー氏に満足せず、貧富の格差是正を訴えるエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)の出馬を求めたが、本人は拒否。「党内にヒラリー氏を脅かす存在はレーダーに映らない」(民主党全国委員会幹部)という状況だ。
中間選挙勝利で勢いに乗る共和党では、ニュージャージー州知事のクリス・クリスティ氏やランド・ポール上院議員(ケンタッキー州)らの名が取り沙汰されるが、俄然注目され始めたのがブッシュ前大統領の弟、ジェブ・ブッシュ氏(元フロリダ州知事)である。
「中間選挙では応援に飛び回り、接戦州で共和党候補を次々と当選に導いた功労者。公職から7年離れているが、知名度も資金力も申し分ない。兄の大統領時代の評判がマイナス要因だが、ヒラリー氏に十分に対抗できる」(共和党幹部)
ヒラリー氏の“最大の敵”は年齢だ。2年後の選挙で勝利した場合、就任時には69歳。レーガン元大統領と並ぶ最高齢大統領となる。
去る10月26日の67歳の誕生日に記者から「相変わらず美しい」とお世辞(嫌味?)をいわれたヒラリー氏は、「これが“お祖母ちゃんの色気(A grandmother glow)”よ」とかわす余裕を見せたが、目の周りの皺の深さは米国人が求める「強い指導者像」とは必ずしも一致しない。
●文/高濱賛(在米ジャーナリスト)
※週刊ポスト2014年11月21日号