ライフ

無保険者でも利用可能「無料低額診療施設」を知っていますか 

 保険証もお金もなく、病気になっても病院に行けない人が増えている。そんな人に頼りになるのが社会福祉法で定められた「無料低額診療施設」だ。その存在を知らない人も多いだろう。コラムニストのオバタカズユキ氏が説明する。

 * * *
 この年末年始は日の並びがよくて、九連休を満喫中のサラリーマンも多いとか。一部の業界の大手企業はボーナスもよく、ガソリンの価格も低下している。ということで、国内旅行が賑わっているらしい。

 たとえ一部であれ、街角景気や消費者態度の活性化は喜ばしい話なのだが、その一部に該当しないと苛立ちが増す状況でもあって、冬のボーナスなんか出なかったし、正月休みなんかロクにとれないし、という人がフェイスブックを覗くたびにリアル充実写真ばかりを見せつけられたりすると、どうしたってフザケンナという気持ちが湧いてしまうものである。

 一年の中でもクリスマスから正月休みにかけては、階層社会ニッポンの現実が残酷なまでにあらわとなる期間なのだ。

 でも、そうやってフザケンナ、と悪態をついているうちはまだ大丈夫。危惧するのは、階層社会の底辺で疲れ果て、他人をうらやむ気力もなくなっている人々が増えているのではないかという問題である。

 たとえば、国民健康保険の滞納率は増加している。最新データが2012年のものしかないのだが(こういう大事な統計はもっと迅速に公表してくれ厚労省)、全国の滞納率は18.1%、東京都だと24.1%が支払いを滞らせているそうだ。

 そのうちの多くは金がないから保険料を払えない。長いことそうしているうちに保険証を没収され、事実上の無保険者になってしまっている人もいる。国民皆保険は日本が誇るべき制度だけど、実際は皆が皆その恩恵を受けているわけではないのである。

 で、そういう無保険者や、手持ちの金がほとんどない人が、体調を壊してしまうとどうなるか。病院にいけず、より体調不良をこじらせ、ますますまともに働けなくなって、貧困の渦の中へ一気に巻きこまれるのだ。

 これ、ヒトゴトではないと思う。私のような自営業者はいつも身近な問題だし、安定したお勤めの人であっても、何かのアクシデントで心の病気のひとつでもやらかせば、簡単に堕ちていくものなのである。

 だから、もしも無保険者になったとき、それでも医療を受けられる方法があるのだということは知っておいて損がない。ていうか、まわりにそんな人がもしいたら、是非ともその方法を伝えてほしい。リア充たちが満喫した日々を送っている正月休みであるからこそ、だ。

 具体的には、「無料低額診療施設」と「(当事者が住んでいる都道府県の名称)」のアンド検索をかけるところからだ。そうすると、保険証やお金がなくても診療を受けつける医療機関の一覧表が、なにかしら出てくる。

 それらの医療は、社会的正義感の強い医師や看護師などがボランティア精神を発揮してやっている、のではなく、社会福祉法が<生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業>と定めたものだ。「低所得者」「要保護者」「ホームレス」「DV被害者」「人身取引被害者」などの生計困難者がもっと困難なことにならないよう、国や医師会も「無料低額診療施設」の利用を薦めているのである。

 ただ、地域によっては、この制度を利用したくても、実際にどこの病院へ行けばいいのか、調べがめんどくさい。

 ためしに、「無料低額診療施設」と「東京都」をアンド検索すると、検索結果画面のトップに、東京都福祉保健局の「施設等一覧(本編)」が表示されるはずだ。そのページを開いてみると、なにやらいろんな施設のジャンル名がずらずら並び、「無料低額診療施設」が「その他の社会福祉施設等」の中に括られていて見つけにくい。

 しかも、「その他の社会福祉施設等」はクリッカブルになっているのだが、クリックして飛び出してくるのはエクセルだ。そのエクセルの中には、「授産施設(授産場)」「宿泊所」などと並んで「無料低額診療施設」のタブがあり、そこをさらにクリックしないと、探し物は出てこない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国民に愛された『TOKIO』解散》現場騒然の「山口達也ブチギレ事件」、長瀬智也「ヤラセだらけの世界」意味深投稿が示唆する“メンバーの本当の関係”
NEWSポストセブン
漫画家の小林よしのり氏
小林よしのり氏、皇位継承問題に提言「皇室存続のためにはただちに皇室典範を改正し、愛子皇太子殿下の誕生を実現しなければならない」
週刊ポスト
教員ら10名ほどが集まって結成された”盗撮愛好家グループ”とは──(写真左:時事通信フォト)
〈機会があってうらやましいです〉教師約10人参加の“児童盗撮愛好家グループ”の“鬼畜なやりとり”、教育委員会は「(容疑者は)普通の先生」「こういった類いの不祥事は事前に認知が難しい」
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO(HPより)
「TOKIOを舐めるんじゃない!」電撃解散きっかけの国分太一が「どうしても許せなかった」プロとしての“プライド” ミスしたスタッフにもフォロー
NEWSポストセブン
大手芸能事務所の「研音」に移籍した宮野真守
《異例の”VIP待遇”》「マネージャー3名体制」「専用の送迎車」期待を背負い好スタート、新天地の宮野真守は“イケボ売り”から“ビジュアル推し”にシフトか
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン
4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン