スポーツ

女子マラソン代表選考に抗議した増田明美氏に見習うべき点は

 女子マラソンの代表選手選考に対する解説者の増田明美氏の抗議が話題になっている。増田氏の言葉遣いに大人力コラムニスト・石原壮一郎氏は「大人の勇気と節度」を見る。

 * * *
 日本陸連と解説者の増田明美さんが、激しいバトルを繰り広げました。3月11日に世界選手権(8月、北京)の代表を発表する記者会見が開かれましたが、女子のマラソン選手の選考について、増田明美さんが「これでいいんでしょうか?」と異議を唱えたのです。

 代表に選ばれたのは、名古屋ウィメンズマラソンで3位(2時間22分48秒)の前田彩里と同じレースで4位(2時間24分42秒)だった伊藤舞、大阪国際マラソン3位(2時間26分39秒)の重友梨佐の3人でした。もうひとり、横浜国際マラソンで優勝(2時間26分57秒)した田中智美も有望と見られていましたが、選ばれませんでした。

 増田明美さんは、居並ぶ日本陸連の幹部たちに質問。まずは「びっくりしました。なぜ同じ26分台で大阪で3位だった重友さんなんでしょうか?」と口火を切ります。それに対して日本陸連の酒井強化副委員長は、「優勝は評価するが、田中選手の走りは世界と戦うという意味では内容は物足りないものがあった」と返します。

 しかし、増田さんは引き下がりません。「重友さんは確かに復調の兆しがあったが、まだまだのように見えた。優勝した田中さんには圧倒的な強さがあったと思う。これで本当にいいのでしょうか?」と食い下がります。酒井副委員長は「我々も現場のプロ。世界を目指す上で、評価した」と説明。やり取りはいったん終わりますが、増田さんは最後にまた手をあげて「世界を見ると、後半上げていくことを重視している選手もいる。この説明を聞いても、すっきりしないです」と、選考結果を嘆きました。

 オリンピックや世界選手権のマラソンの代表選考は、いくつかのレースでの成績を総合して判断するため、以前から「なぜ、こっちの選手が!?」ということが話題になりがち。発表後は日本陸連に、選考を疑問視するファンから多くの電話が寄せられたそうです。

 日頃から増田さんの解説は、選手への愛があふれているのはもちろん、綿密な取材と丁寧な準備を元に、興味深いエピソードがふんだんに盛り込まれることで定評があります。以前、某ワイドショーでコメンテーターとして何度かごいっしょさせていただいたことがありますが、本番前の打ち合わせのときに、ディレクターの話を聞きながら台本にあれほど細かくメモを書く人はほかに見たことがありません。

 そんな増田さんだけに、今回のことも単に何となくではなく、客観的に判断してよっぽど納得がいかなかったのでしょう。しかし、陸上競技の解説者である増田さんにとって、日本陸連は嫌われるわけにはいかない相手。一般の会社で言えば、重役かスポンサーみたいなものです。

 それでも増田さんは、きちんと自分の意見をぶつけました。サラリーマンをしている人や、あるいは自営業やフリーランスでも同じですが、利害関係がある相手に対して「それはおかしいと思う」と言える人が、どれだけいるでしょうか。酔っぱらって「俺は言うよ! ああ、言うとも!」なんて盛り上がっている人は、断言しますが、相手にとって耳が痛いことなんて絶対に言えません。言える人は、酔って気炎を上げる前に言ってます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
イセ食品グループ創業者で元会長の伊勢彦信氏
《小室圭さんに私の裁判弁護を依頼します》眞子さんの“後見人”イセ食品元会長が告白、夫妻のアパートで食事した際に気になった「夫としての資質」
週刊ポスト
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
《ルフィ事件》「腕を切り落とせ」恐怖の制裁証言も…「藤田は今村のビジネスを全部奪おうとしていた」「小島は組織のナンバー2だった」指示役らの裁判での“攻防戦”
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ツアーに本格復帰しているものの…(左から小林夢果、川崎春花、阿部未悠/時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫》川崎春花、小林夢果、阿部未悠のプロ3人にゴルフの成績で “明暗” 「禊を済ませた川崎が苦戦しているのに…」の声も
週刊ポスト
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト
山本アナは2016年にTBSに入局。現在は『報道特集』のメインキャスターを務める(TBSホームページより)
【「報道特集」での発言を直撃取材】TBS山本恵里伽アナが見せた“異変” 記者の間では「神対応の人」と話題
NEWSポストセブン