『怪奇恋愛作戦』(金曜深0時12分)は脚本・監督ケラリーノ・サンドロヴィッチ。内容は、恋愛に負け続けのアラフォー3人女子が妖怪や怪奇現象と闘いながら、遅すぎた青春を燃やすラブコメディー。一瞬おふざけに見えて、実は秀逸なコンセプトワーク。あらかじめ「フィクションである」ことを提示した上での思い切った展開がいい。そうすれば、どんな飛躍もありえない荒唐無稽も、「おはなし」として存分に楽しむことができるという仕掛けです。

「怪奇現象」と「恋愛」をワンセットにしたらどうなるか。「2話で1テーマ」のオムニバス形式で進行したら……といった実験的手法も面白い。タイプがまったく違う3人を主人公に配置するあたりは、ドラマの王道。好みによっていずれかのキャラクターに感情移入ができるという導入装置。「他の人は絶対にやらないアナーキーな傑作」と監督自ら語る異色世界。と同時に、フィクションを楽しむ作品としての典型にもなっていました。

 同じくテレビ東京・金曜深夜の『山田孝之の東京都北区赤羽』もドキュメンタリーとドラマを融合させた独特なタッチで注目を集めました。実在の町・赤羽を舞台に、一人の役者がリアルとフィクションをごちゃまぜにして動き回るいわば「実験」的映像。

 これを見ながら、素材やテーマはまったく違うけれど、帰還兵士のアナーキストを追った衝撃的ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』(1987年・原一男監督)を想起してしまったのは、はたして私だけでしょうか? 

 30年近く前に公開された『ゆきゆきて…』は、ドキュメンタリーでありつつ、主人公がカメラを意識して演じているとも見える、劇映画とドキュメンタリーの境目を鋭く問うことになった歴史に残る問題作でした。

 4月から、フジテレビも「土ドラ枠」(土曜23時40分~24時5分)を復活させるそうです。「深夜」といういわば常識を越える挑戦ができる「ドラマ実験場」から、次の新鮮な作品の芽が出てくることを心待ちにしています。

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