ビジネス

政府の新目標「借金は対GDP比で減ればいい」はご都合主義か

 政府が財政再建の目標に債務残高の国内総生産(GDP)比の縮小を追加する案が浮上している。これに対して「ご都合主義は通用せず」(東京新聞、3月14日付社説)といった批判がある。これをどう考えるか。

 結論から言えば、この案はおかしくないどころか、本来あるべき姿と言っていい。

 財政再建といえば、政府は基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化を目標に掲げてきた。PBは、政府が社会保障や防衛費など政策遂行のための経費を税金その他で賄えているかどうか、をみる指標だ。

 PBが赤字なら税金で経費を賄えていないから不健全、黒字なら健全と評価される。

 ところが実は、PB黒字化は財政再建を達成するうえで小目標にすぎない。大目標が何かといえば、それが冒頭の「債務残高の対GDP比(以下、債務GDP比)」の縮小だ。それは財政再建の定義そのものでもある。住宅ローンで考えればすぐ分かる。

 年収300万円の家計が5000万円のローンを組んだら、家計は破綻するだろう。だが、年収1億円の家計なら何の問題もない。借金の大きさ自体が問題なのではなく、返済能力=家計の経済力との見合いが決め手になる。

 国も同じだ。債務総額が問題なのではなく、国の経済規模=GDPに見合っているかどうかが鍵になる。日本とシンガポールでは国の規模が違うから耐えられる債務総額も当然、違ってくる。

 日本は債務GDP比が膨らんでいるので「財政は悪化している」と評価される。だが比率が横ばいなら安定、もしも右肩下がりに減少していけば、財政再建達成である。

 よく「借金1000兆円は大変だ。全部返済できるのか」と心配する声もある。それも誤解だ。べつに国は借金を全額返済する必要はない。極端に言えば、1000兆円が2000兆円になったところでGDPが4倍になれば、債務GDP比は半分になるから財政再建達成である。

 比率を小さくするには分母のGDPを大きくするか、分子の債務残高を小さくすればいい。債務を減らすことばかり注目されがちだが、高い経済成長を実現してGDPを大きくすれば税収も増えるので、そちらのほうが財政再建の近道になる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
国仲涼子が語る“46歳の現在地”とは
【朝ドラ『ちゅらさん』から24年】国仲涼子が語る“46歳の現在地”「しわだって、それは増えます」 肩肘張らない考え方ができる転機になった子育てと出会い
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン
インフルエンサーの景井ひなが愛犬を巡り裁判トラブルを抱えていた(Instagramより)
《「愛犬・もち太くん」はどっちの子?》フォロワー1000万人TikToker 景井ひなが”元同居人“と“裁判トラブル”、法廷では「毎日モラハラを受けた」という主張も
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン
千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン