巨額の税金を注ぎ込もうとして白紙撤回された新国立競技場の建設。2013年9月、東京都知事として五輪招致を実現させた立役者の前東京都知事・猪瀬直樹氏(68才)ですら、一時期試算された約3000億円という金額は不可解すぎるものだった。猪瀬氏が語る。
「2012年11月のデザイン決定時には、1300億円だった。それなのに、翌2013年、五輪が決まった1か月後の10月にJSC(日本スポーツ振興センター)が試算し直したら3000億円になったと報じられた。円安や資材高騰、人員の増減などで増えたとしても、せいぜい3割くらいだろう。それがいきなり倍以上になった。
その後、2014年5月に、計画規模を縮小して1625億円と試算した。にもかかわらず、2014年の年末には資材費や人件費が上がったとして、3000億円になった。そして、最終的に合意されたのが、今年6月の2500億円という額。なぜこうも二転三転するのか、その内訳もわからなければ、数字が変わる経緯も明らかではない。
こういう事態を防ぐために、私は2013年11月に都議会で“設計内容について専門機関による技術的な精査を受け、透明性を高めることが必要”と指摘したが、結局、専門機関設置は立ち消えとなった。結果的に、試算決定の経緯も内容も不透明なまま、2年以上の時間が経ってしまった。工期が短くなれば、当然コストは増えるだろう」
安倍晋三首相は7月17日、計画を白紙に戻すことを決めた。ただ、それによって問題が解消したわけではない。
「政府は、新たなデザインを公募で選ぶと言っている。しかし、あのザハ・ハディド氏のデザインを選ぶ委員会で、1位をとったザハ氏のデザインと、同点のデザインがあった。同点なので委員長の安藤忠雄さんに一任ということでザハ氏に決めただけ。だからまずは同率一位のデザインでいくらかかるのか試算するのがいちばん早いはずでしょう。
公募、審査など、また時間をかければそのぶん工期は短くなって、費用が余計にかかる。こうした事態は、JSCの不手際、監督省庁である文部科学省の不手際、さらにそれらをチェックすべき五輪組織委員会の不手際など、無責任の連鎖がこうした事態を招いてしまったといえるだろう」(猪瀬氏)
※女性セブン2015年8月13日号