国際情報

独居老人の急増は中国でも大問題 都市部では既に5割を突破

 高齢化社会にどう対処するか、が喫緊の課題であることについて彼我の差はない。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 いまさら指摘するまでもない問題かもしれないが、中国ではいま再び高齢化に関する話題が盛り上がってきている。

 きっかけは『第一財経日報』が7月22日付でサイトに流した記事〈国連が予測 今世紀半ばには中国の高齢者人口(60歳以上)は5億人に近づく〉である。

 タイトルにあるような国連の予測はすでに2012年にも出されていて、決して驚くべき話ではないのだが、記事中では政府が発表した『中国老齢産業発展報告 2014』のなかで指摘されたいくつかの傾向と、同紙が主催して行われた(7月19日開催)シンポジウム「中国式の老人介護の行方」で出されたさまざまな指摘をもとに新たな分析を加えている。

 まず記事で触れられているのは、業界の共通認識として中国の高齢化が「進行のスピートが速く」、「規模が大きく」、かつ「社会が十分に豊かになる前に高齢化が進行を始める」という頭の痛い三つの特徴を備えているということだ。

 中国の高齢化問題が深刻であるのは世界共通の認識であるが、その進行速度と規模も内外で見方はほぼ一致している。

 中国の国家統計局による予測でも、中国の高齢者人口は2014年末までに全人口の15.5%を占めるまでになっていて、人口にして2億1200万人。これが2050年になると4億8000万人にまで膨らみ、全世界の高齢者人口の約4分の1を占めるまでになるというのだ。このころには中国の高齢者だけでアメリカの人口を上回ることも予測されている。

 こう指摘される規模の大きさに圧倒されるが、目下、中国社会が直面する問題はもっと深刻だ。

 それが、現状すでに80歳以上の人口が2400万人に達していて、高齢化人口の中の11%を占めているという問題だ。そして、こうした日本でいう後期高齢者の多くが、一人ぼっちにされている。

 すでに都市部においては、“老人空巣家庭(独居老人)”が54%となっていて、農村においても半数に近づいているというのだ。独居老人が団結して抗議行動に出るとは考えにくいが、殺伐とした社会が現出しても不思議ではない環境ができつつあると見て間違いないだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
宮崎あおい
《主演・大泉洋を食った?》『ちょっとだけエスパー』で13年ぶり民放連ドラ出演の宮崎あおい、芸歴36年目のキャリアと40歳国民的女優の“今” 
NEWSポストセブン
悠仁さまが2026年1月2日に皇居で行われる「新年一般参賀」に出席される見通し(写真/JMPA)
悠仁さまが新年一般参賀にご出席の見通し、愛子さまと初めて並び立たれる場に 来春にはUAE大統領来日時の晩餐会で“外交デビュー”の可能性も、ご活躍の場は増すばかり
女性セブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
会社の事務所内で女性を刺したとして中国籍のリュウ・カ容疑者が逮捕された(右・千葉県警察HPより)
《いすみ市・同僚女性を社内で刺殺》中国籍のリュウ・カ容疑者が起こしていた“近隣刃物トラブル”「ナイフを手に私を見下ろして…」「窓のアルミシート、不気味だよね」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト