芸能

武田鉄矢 「家族は憎たらしい存在ということに気づくべき」

 2010年に出版しベストセラーとなった著書・『私塾・坂本竜馬』が文庫化された武田鉄也。その発売を記念して、武田自身が家族をテーマに語る。人間関係に苦しむ人が多い混迷している現代、彼が考える家族の在り方とは?

 * * *
 今度出版した本は、大好きな坂本竜馬についていろいろ書いています。その坂本竜馬と同じくらい大切な存在が家族です。

 最近、孫が祖父母を殺したり、母親がわが子を虐待したりするニュースが相次いで報じられています。そのたびに家族は唯一無二の素晴らしい存在だから、その絆を大切にしなければならないといわれます。

 でも、実は、家族は憎たらしい存在だということに気づく必要があると思うんです。そこから始めないと、事件はなくならないんじゃないかと考えてしまう。

 家族は、長い間一緒に住んでるから、自分の急所を知ってる。そこにきれいに蹴りを入れてきます。それが痛いのなんの(笑い)。

 こないだ妻に言われたのは、床をじいっと見られて、「フケ? これ、フケ? あなたのフケ?」って。憎たらしいでしょ(笑い)。汚れたものがあると、何で汚れてるか追及しないと気が済まないんだね。

 いちばん弱ったときにいちばん強い励ましの言葉をくれるという側面が強調されているけど、何でもないときにその人がいちばん弱る言葉を知っているのも家族なんです。

 これは、思想家の内田樹さんが言ってることなんだけど、さらに不思議なのは、家族にカチーンときながらも、とりあえず「ご飯よ」って言われると、飯を食ってるっていうことなんだよね。けんかしながらでも飯を食べてる。こんなのできるのは家族しかいない。

 つまり、食卓につくんだよ。それでも飯を食べていますという、その一点が家族であって、弱り果てたときに助け合ったり、病のときに支えてくれたりとか、そんないいときだけのものではないんです。イライラや短所…すべてを含めて、まだそれでも飯を食うってところに家族の意味合いがある。

 腹立つなと思うんだけど、2日ばかり経つと、あの怒りは何だったのか忘れてるんだよね。だから、家族って、憎んだり怒ったりするんだけど、飯を食べてるうちに、何で怒ったのか、何で憎んだのかを忘れてしまう。そのことが家族という最後の糸なんじゃないかな。

 家族は本来憎たらしいもの。そういう存在だということに気づいたときに、また違った素晴らしさがわかり、絆が深まると思います。

※女性セブン2015年10月22・29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
【大麻のルールをプレゼンしていた】俳優・清水尋也容疑者が“3か月間の米ロス留学”で発表した“マリファナの法律”「本人はどこの国へ行ってもダメ」《麻薬取締法違反で逮捕》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン