国内

石原慎太郎氏 宿敵だからわかる天才・田中角栄の「霊言」

石原慎太郎氏独占インタビュー

 田中金権政治を批判する急先鋒だった石原慎太郎氏が、『天才』というタイトルで上梓した新刊は、田中角栄の人生を一人称で書くというまさかの“霊言”だった。幼少期の吃音コンプレックスから政界入り、角福戦争やロッキード事件の内幕、家族との軋轢までが、すべて「角栄目線」で描かれている。なぜいま角栄なのか。石原氏に聞いた。

 * * *
 政治から引退した直後に、森元孝さんという早稲田大学の教授が、『石原慎太郎の社会現象学──亀裂の弁証法』という本で、俺の小説について緻密に評価してくれた。日本の社会は狭量だから、著名な政治家が良い小説を書くということを認めないんだ。だから、この本で自分の文学が浮かばれたと思った。

 その感謝を込めて食事に誘った席で、森さんが「石原さん、あなた実は田中角栄という人物が好きなのではないですか?」と聞くから、「たしかに、現代にあんな中世期的でバルザック的な人物はいないので、とても興味がありました」と言ったんだ。すると、「あの人のことを一人称で書いたらどうですか」と提案してきた。彼は俺の『生還』や『再生』といった一人称の小説を高く評価してくれていたから。それで「面白い、書いてみよう」と。

 これまで政治家であることで自分の文学に申し訳ないことをしてきたと思っていたけど、これは政治家を経験しなければ書けなかった。本当に皮肉な取り合わせだと思うね。

〈その言葉には理由がある。石原氏は約40年前に「君 国売り給うことなかれ──金権の虚妄を排す──」(文藝春秋1974年9月号)を発表。今回のあとがきにも「私はまぎれもなく田中角栄の金権主義を最初に批判し真っ向から弓を引いた人間だった」と記している。〉(〈 〉内は編集部。以下同)

 後悔しているのは、文藝春秋(2011年11月号)に「田中角栄の恋文」という記事が出て、(秘書で愛人だった)佐藤昭子の娘が本当の実子で、しかも当時、リストカットや飛び降り自殺未遂までしていたとわかったこと。気の毒だとおもったし、楯突いて申し訳なかったという気持ちもある。

 一方で、金権政治を批判した後、こんなことがあった。スリーハンドレッドクラブ(高級ゴルフ場)でテニスをしていて昼食を取りにクラブハウスに引き揚げようとしたら、たまたま玉置和郎(青嵐会に参加していた参院議員)がいたんだよな。俺を見てびっくりした顔をして、バツが悪そうに片手を挙げている。それを見て向かいに座っていた相手が怪訝そうに振り返って、それが角さんだったんだ。

関連記事

トピックス

中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「山健組組長がヒットマンに」「ケーキ片手に発砲」「ラーメン店店主銃撃」公判がまったく進まない“重大事件の現在”《山口組分裂抗争終結後に残された謎》
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
財務省の「隠された不祥事リスト」を入手(時事通信フォト)
《スクープ公開》財務省「隠された不祥事リスト」入手 過去1年の間にも警察から遺失物を詐取しようとした大阪税関職員、神戸税関の職員はアワビを“密漁”、500万円貸付け受け「利益供与」で処分
週刊ポスト
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン