国際情報

イスラム国 憎悪と報復の連鎖を止める方法は「話し合い」

 国際社会にいま起きていることは、サミュエル・ハンティントン氏がかつて主張したような「文明の衝突」ではなく、「悪の拡散」だと経営コンサルタントの大前研一氏はいう。従来の「国民国家(ネーション・ステート)」の概念を覆すイスラム国(IS)の出現によって混迷をきわめる状況を解決する方法について、大前氏が解説する。

 * * *
 本来なら欧米先進国はISを攻撃する一方で、自国内におけるイスラム系住民の貧困や宗教的偏見・差別を解消していかねばならない。しかし、この問題に真正面から取り組み、大きな成果を上げている政府は寡聞にして知らない。

 積極的に難民を受け入れてきたドイツのアンゲラ・メルケル首相も、昨年の大晦日にケルンで移民や難民申請者らが女性に性的暴行を加えたとされる事件が発生して以来、世論の風向きが大きく変わって窮地に立たされている。欧米各国では極右勢力伸張、移民排斥の動きが加速する一方だ。しかし、それによって移民、難民はますます追い詰められ、さらに「隠れISテロリスト」が増殖するという悪循環に陥るだけである。

 また、アメリカ主導の有志連合やロシアによるISへの空爆は凄まじい破壊だが、実際には意外に効果が上がっていない。それどころか、自分たちは遠くで安閑としながら他国の人々を爆弾やミサイルで殺戮するレイジー(無精)な国家が空爆を激化すればするほど、悪は拡散する。ISテロリストは、空爆では抑え込めないのだ。

 あえてISの立場から考えると、圧倒的な軍事力を有する欧米やロシアなどの国民国家群と戦う手段は、彼らのホームグラウンドでテロを起こし、民衆を脅かして空爆をやめるように世論を誘導するしかない。したがって、このままでは永遠にテロはなくならないだろう。

 では、憎悪と報復の連鎖を止める方法はあるのか? 私はやはり「話し合い」しかないと思う。

関連記事

トピックス

〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン