【8位『徳川家康』(1983年)】
主演/滝田栄(徳川家康)、原作/山岡荘八、脚本/小山内美江子
重厚な山岡荘八の原作に忠実な演出。家康の類稀なる政治力・経営手腕も見どころ。信長役の役所広司の人気が爆発、出世作となった。
「これまで『狸親父』的なイメージの強かった家康に長身の二枚目滝田栄を配して、その「人間」としての生き方を掘り下げた作品。
だからといって綺麗事で終わらせることはなく、信長(役所広司)の命令で長男を切腹せざるをえなくする姿や、晩年になって豊臣家を策謀によって追い込んでいく姿など、『手を汚す』様も丁寧に描かれていた。
そのことでかえって、『たとえどんな困難なことがあろうとも戦のない時代を作ってみせる』という家康の想いが浮き彫りになっていき、陰湿で野心的な策謀家のイメージを一新している」
【9位『北条時宗』(2001年)】
主演/和泉元彌(北条時宗)、原作/高橋克彦、脚本/井上由美子
幕府の内乱や蒙古の襲来など鎌倉時代中期を描いた唯一の大河ドラマ。乗馬や弓のシーンのリアリティが光る。お笑い芸人の宮迫博之が北条義宗役で演技に開眼。
「和泉元彌扮する主人公と、彼と争うことになる兄を演じる渡部篤郎はあまり頼りない。ただ、その脇を固める陣営は素晴らしい。
特に、二人の父親役を演じる渡辺謙が圧巻だった。最初は爽やかな男だったのが権力を握る中で貫禄を増していき、やがて毒を盛られて迎える晩年は、どこか常軌を逸した狂気すら漂わせるようになっていく。
顔を金粉でメイクして敵対者の殺害命令を下していく様はあまりに不気味で、狭い街でひたすら権力闘争の陰謀だけが渦巻いていた当時の鎌倉の閉塞感を体現した」
【10位『秀吉』(1996年)】
主演/竹中直人(豊臣秀吉)、原作/堺屋太一、脚本/竹山洋
竹中の泥臭くエネルギッシュな秀吉に圧倒される。渡哲也演じる懐深い信長も忘れがたい。秀吉の決め台詞「心配御無用!」が流行語に。
「農民から天下人まで一気に駆け上がる秀吉の姿を竹中直人が躍動感あふれる芝居で魅せたが、それ以上にインパクトを残したのが、信長を演じる渡哲也だった。
竹中の秀吉は『動』なのに対し、渡の信長は徹底して『静』。余計なことは口にせず、表情は厳しく強張ったまま決して動かすことはなく、いつも鋭い眼光でジッと相手を見据えながら低く押し出すような話し方で相手を威圧していく。そこにいるだけで震え上がりそうになる渡の雰囲気が、信長に圧倒的なカリスマ性をもたらしていた」
※なお、春日氏が選んだ1位~5位は以下の通り。
1位『独眼竜政宗』(1987年)
2位『武田信玄』(1988年)
3位『草燃える』(1979年)
4位『翔ぶが如く』(1990年)
5位『黄金の日日』(1978年)
※週刊ポスト2016年9月2日号