そんなある日、小学4年生になった長女が突然、「お父さんが心配だから、お父さんと住む」と言い出したのです。とっさに、「私に隠れて、連絡を取り合っていたのか!」と娘に手を上げて、取り乱しました。思えば私だけが親ではありません。

 バレエを習いたいと言っていた娘は、「お父さんのところに来たらバレエ留学だってさせてやるぞ」と言われ、その気になったようです。その気持ちは理解できても、黙って娘を手放すわけにはいきません。元夫が約束の養育費を振り込んだのは、最初の1回だけ。あとは何度、連絡してもなしのつぶてでしたから。

 私は元夫を裁判所に訴えました。結果、「養育費350万円を支払え」という判決が下りたのですが、「そんなにお金がない」と言い出したので、300万円で和解しました。

「現金で渡したい」と言う元夫に、新宿の喫茶店へ呼び出され、「確かめて」と、紙袋から取り出したお金のほとんどが千円札。

「亡くなったお袋が、たんす預金していたものだ」と怨念たっぷりに言う元夫に、私も「あなたの千円札好きは、お義母さん譲りだったのね」と返さずにいられませんでした。

 すると、「これは愛佳(長女)の手切れ金だと思え」と、元夫はこれ以上ないイヤなことをつけ加えました。

 いったん心が離れた夫婦なんてこんなもの。そう自分に言い聞かせても、店から出ると涙が止まりませんでした。

◆元夫が長女に「お母さん」と紹介した女性は5才の連れ子がいて妊娠8か月

 長女が欠けた食卓は思った以上に寂しく、気がつくと涙が勝手に流れてきます。有名中華料理店のアルバイトは通勤に時間がかかったため、長女に家事をさせたことも後悔しました。

 再び、リクルートスーツに身を包んで仕事探し。今度こそ、長く続く仕事に就きたいと必死でした。そのかいあって、建設資材問屋の経理事務に採用されました。

 朝起きると化粧をして会社に向かうのが楽しくて仕方がない。実は取引先の7才年下の男性と、密かに交際し始めたからです。

 男女の関係になると、すぐにひとり暮らしの彼は、私の家に転がり込んできました。同居して2年。彼は電車で2時間半ほどの地方に転勤して、遠距離恋愛に。それも少しの間で、いずれ彼と結婚するものと思っていました。

 私のお給料もかなりよくなり、彼の実家と行き来して、金銭的な援助をしていたことを彼も知っていたからです。

 そんなときに元夫と住んでいた長女が、私の元に戻ってきたのです。聞けば、夫と暮らすようになった数か月後、「今日からこの人がお母さんだから」と紹介された女性には5才の連れ子がいて、妊娠8か月。

 長女はバレエを習うどころか、家政婦代わりにこき使われたそうです。継母は夫と激しいけんかをした翌日、連れ子だけを連れて家を出て行き、残された生後半年の弟は泣き通し。見かねて世話をする長女に夫は、「学校を辞めて育てろ」と迫ったとか。

 そんな扱いをされながらも長女は、「あの子はどうしているか…」と、わっと声を上げて泣き出しました。「気持ちはわかるけど、あなたが考えることじゃないよ」と、私は長い間、娘の背中をなでていました。

◆年下の彼が彼女と暮らす部屋で半狂乱 洋服と下着を切り刻んだ

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