この春からお子さんを大学に通わせる読者も多いだろう。親としての肩の荷がおりたようで、ほっとしている人も多いに違いない。だが4月からの子どもの大学生活で親として気をつけなければならないのが、「ブラックバイトの罠」である。親として子どもがブラックバイトにはまらないようどう気をつければ良いのか、専門家に聞いた。(取材・文=フリーライター・神田憲行)
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「ブラックバイト」とは「ブラック企業」のアルバイト版である。親世代からすると今は考えられないような、働くアルバイトを「食い物」にする会社が存在する。その方法もずる賢く、昨日まで高校生だったような大学生ひとりで対応することは難しい。親として、子どもがブラックバイトの罠にはまらないにはどうすればいいか。「大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A」(以下「Q&A」と略、旬報社)の共著者のひとりで、法政大学キャリアデザイン学部教授の上西充子氏に聞いた。
──「Q&A」を拝読してまず驚いたのは、アルバイトにさまざまな罠があることです。時給が安い研修期間が不当に長いとか、アパレルで働く際にお店の商品を自費購入(社員割引)して身につけなくてはならないとか。親世代にはこういうことがなく、今の子どものアルバイト環境について甘く考えているんじゃないでしょうか。
上西:甘く考えていると思います。「ブラックバイト」について取材を受けて実例をいろいろお話しすると、記者の方が「今のバイトはそんなに大変なんですか」と驚かれるのも少なくありません。
親御さんの世代だとアルバイトは正社員の補助的なものだったと思うんです。しかし今の学生が働く現場は、非正規社員の割合が高くなっています。就業構造基本調査によれば、飲食店における非正規社員比率は1987年に53.1%だったのに、2012年には76.6%になっています。学生バイトがよく働く職場に限れば、もっと非正規率は高くなってバイト(フリーター含む)を中心で回しているところがほとんどだと思います。
職場でのアルバイトの依存度が高くなればなるほど、バイトに対する要求や勤務時間もきつくなります。それが長時間労働やシフトの強要など問題につながっていると思います。
──学生アルバイトのトラブルで多いものはなんですか。
上西:厚生労働省が2015年11月9日に公表した「大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査結果について」によると、「採用時に合意した以上のシフトを入れられた」「一方的に急なシフト変更を命じられた」「準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった」がトップ3です。
シフトを一方的に押しつけられたり急に変更されると、大学の授業に出席できなくなったり、レポート課題の準備ができなくなり、成績不良の原因になります。また準備や片付けの時間の賃金が支払われないとは、実質的に時給の減額にあたります。
ちなみにアルバイトでも労働時間その他の労働条件は書面で労働者に交付しなければならないことが労働基準法施行規則5条で決められています。書面が交付されない場合の方がトラブルがおこりがちなので、書面(労働条件通知書など)を求めてよく確認し、大事に保管しておくことをお勧めします。