◆人間性に呆れている
西尾論考の波紋はまだまだ広がりそうだ。ベテランの政治部記者は言う。
「森友・加計問題で逆風が吹き荒れる中、それでも安倍政権の支持率は30~40%台に踏みとどまっていた。安倍首相は支持率を下支えしているのが、コアな保守層だと信じている。だからこそ、保守系のメディアや評論家、ネット上で安倍支持を訴える人たちの評価を一番気にしているし、保守派からの批判を一番気にしている」
その恐れている事態が現実となりつつある。安倍政権に期待が強かった分、裏切られたと感じた人たちは強力な反安倍に回る。支持基盤である保守層が離反していけば、文字通り政権の“底が抜ける”ことになってしまう。
江藤淳氏による小沢一郎氏への檄文は言葉こそ厳しかったが、それは期待の裏返しだった。現在の保守論客による安倍批判も、本音はそうではないのか。西尾氏にこう向けたところ、一笑に付された。
「いや、私には江藤さんのように叱咤激励するつもりはないですよ。単純に安倍首相の人間性に呆れ、失望しただけです」
安倍首相はもはや、下関に帰ったところで再起はできないのかもしれない。
※週刊ポスト2017年9月8日号