一方、インターネット赤ちゃんポストはお金が介在した“契約”になっています。『妊娠して子供を渡せばお金がもらえる』と思ってしまう人が現れるかもしれない。そうなれば、まさに人身売買です。これを生業にする人間まで出てきそうで、恐ろしいです」
実際、民間の養子縁組斡旋業者の中には金銭目当ての悪徳業者がいる。その1つが『赤ちゃんの未来を救う会』(千葉県)だ。1回につき100万円の斡旋成功報酬を受け取っていたことが営利目的とされ、昨年9月に県から事業停止命令が出された。当時、同会の代表男性はNHKの取材に対し、「福祉の仕事はおれの仕事じゃない。金をもらうのが基本」と公言。今年3月、千葉県警はこの男性を児童福祉法違反の疑いで逮捕している。
過去、インターネット赤ちゃんポストでも、里親が実母にお金を支払う旨をホームページのトップに記載したところ、《赤ちゃんオークションだ》といったバッシングが相次いだ経緯がある。
だが、一連の批判に対し、阪口氏は動じない。
「当方の場合、里親が払うお金の中で、利益として取っているものは1円もありません。完全無報酬です。私は過去にIT事業や不動産で一生働かなくてもいいだけの収入を得ています。いろいろ言われていることは百も承知。『命を救う』という一点だけを見ているので、何を言われようと痛くもかゆくもありません。むしろバッシングは大歓迎です。批判されて注目されることで、サイトを知ってくれる人が増えたらそれでいい」
◆前夫からの養育費ゼロの女性は…
事実、インターネット赤ちゃんポストで救われた女性は多数いる。今年7月、同サイトを通じて、産んで間もない女の子を養子に出したAさん(29才 埼玉県在住)もその1人だ。
10代で結婚し、2児を出産。昨年離婚して以降、2人の子供と慎ましく暮らしていたという彼女はある日、離婚後に交際した男性との子供を妊娠したことに気づく。
「そのときにはもう5か月でした。もともとピルをのんでいたのですが、ちょうど別の薬に変更した時期と重なって、吐き気などの症状は薬の副作用だと思っていたんです。妊娠がわかった途端、彼とは一切連絡が取れなくなっちゃって…」(Aさん)
離婚時の取り決めで、前夫からの養育費はゼロ。当時、夜の仕事で生計を立てていたAさんだが、2人の子供を育てるだけで生活はギリギリだった。産んでも絶対に育てられない。時期的に中絶することもできない。そもそも産むお金がない…。三重苦に絶望しながら、日々、お腹は膨らんでいく。