そんな西郷に影響を与え、魅力を増幅させているのが周囲の登場人物。カリスマ性あふれる薩摩藩主・島津斉彬(渡辺謙)、生涯の盟友でありライバルの大久保利通(瑛太)、信頼関係で結ばれながらも最後は袂を分かつ弟・西郷従道(錦戸亮)らとの関係性は、主従や友情を超えた命懸けの深い絆を感じさせます。
西郷は女性からもモテモテだっただけに、女優陣もタイプの異なる美女ぞろい。斉彬の養女・篤姫(北川景子)、隆盛と恋仲になる島の娘・愛加那(二階堂ふみ)、3番目の妻・岩山糸(黒木華)らとの恋模様にも期待していいでしょう。
その他にも、目まぐるしく変わる時世と人間関係、薩摩の雄大な自然、鈴木さんそっくりの子役・渡邉蒼くんなど見どころは多彩。ただそれでも前述したように、「すべては西郷隆盛の魅力あってこそ」の作品になるでしょう。
『西郷どん』で描かれる西郷隆盛は、もしかしたら明治維新から150年を経た現代の日本にこそ求められるリーダーなのかもしれません。同作の影響で、政治、経済、スポーツ、音楽などの各分野で、「人を愛し、人から愛されるリーダー」が脚光を浴びる一年になる予感がしています。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。