綾乃さんが既婚者でいる間、男女の関係はなかったし、誘われたこともなかったという。だからこそ、ご飯友だちを続けられたわけだが、この人はこれでいいのだろうかという疑問が、頭をよぎるようになっていった。

「出会って4年くらいたった頃ですかね。真一さんって、お金使って女の子とご飯食べて、本当に面白いんですか? って聞いたんです。そしたら、面白いよって。おじさんって孤独な生きものだからと。そのとき、きゅんとしちゃったんですよね……」

 しかし、元夫と別れた理由に、真一さんの存在は入ってなかったと綾乃さんは断言する。自分の気持ちに気付いたのは、もう少し後だったからだ。

◆私のことが好きに違いない、という確信があったが……

「私が離婚したことを告げると、彼は別段驚いた様子もなく、若いんだからまたガンバれ! と言いました。そのとき、あれ? と。迎えに来てくれるんじゃないのと?」

 父親と同じような年の男性と付き合うなんて考えられない、頭ではそう思っていたが、5年のつき合いが、年齢差を埋めつつあった。何より綾乃さんは、真一さんを人として信用していた。しばらくして、ご飯友だち以上に進みたい、と、はっきりと口にした。

「自分がこんな気持ちになるなんて、自分でもびっくりしました。でも、好きになってしまったと気付いた以上、私は子供が欲しかったから、急がなくちゃと思ったんです。私も若くないけど、彼はもっと若くないから」

 とはいえ、真一氏の気持ちや、プライベートは気にならなったのだろうか?

「何の見返りもなく私を食事に連れていってくれるなんて、私のことが好きに違いない、という……、今から思えば、奢りとも、未熟ともいえる、確信があったんです」

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