9回表。二死ランナーなし。ここから宮崎仁斗、中川、藤原、根尾が四球を選んで同点に追いつき、逆転打へとつなげた。後のない状況で冷静に四球を選んだ4選手はいずれも前チームから経験を積んできた選手たち。根尾は言った。

「僕らにはどこにも負けない経験がある。それが最後の場面に生きた」

 彼らは一球、ワンプレーの恐ろしさを肌で知っている。だからこそ、根尾が昨夏の甲子園を振り返り、「一度死んだ」と語った状況から生還することを可能にした。大差がついた試合でも、27個目のアウトを奪うまで微塵も隙を見せず、徹頭徹尾、相手を叩いてきた。

 こうした桐蔭野球の結晶が、金足農業との決勝だった。西谷監督はこれまで、“最強世代”と呼ばれることを忌避してきたが、監督個人として最多記録となる春夏7度目の日本一を手にした今は違う。

「昨年の選抜を含め、彼らは3度、日本一となった。こんなチームは他にないわけですから……」

 やはり100回記念大会の頂点に立つべきチームだった。そのあまりの強さが顰蹙を買ったとしても、だ。

※週刊ポスト2018年9月7日号

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