「医学的には妊娠10週で皮膚の感覚がいちばん最初に芽生え、その後16週以降、五感が備わってきます。発達が最も遅いのは視覚で、生後8週間経ってからようやく物の色や形の違いがわかるようになります。
それでも胎児は自分の周りについてしっかり認識しています。私たちの感覚でいう『見る・聞く』ではなく、五感をフル稼働して物事を感じ、脳ではなく細胞一つひとつに記憶しているのでしょう」
なぜ多くの人が「生まれる前の物語」に共感するのか。最大のポイントは、“子供たちが自ら選んで生まれてきた”ということだという。
「生まれる前の記憶はそれぞれですが、子供たちが語るのは『私はお母さんを選んで生まれてきた』ということです。しかも子供は母親の役に立つために生まれてきたと言うんです」(池川さん)
池川さんがこの話をすると、多くの母親の態度が一変するという。
「講演に参加するかたの中には子育てに悩んだり、子供を虐待してしまう母親もいます。そんな母親に『子育ては思うようにいかないことも多いけど、みんなあなたを選んで、あなたのために命をかけて生まれてきたんですよ』と伝えると、誰もが表情をサッと変えて『早く家に帰って子供に会いたい』と言います。親子関係や夫婦関係まで好転するケースが多い。
裏を返せばみなさんが生まれてきたのは母親が“この子を産みたい”と願って産んでくれたということ。つまり誰もが、生まれただけで母親の役に立っている。あなたが生きていることはすでに誰かの役に立っているんです。
そう思いを凝らすと、いろいろな悩みがあったとしても、“私は生まれてよかったんだ”と自分の人生を肯定できるはずです」(池川さん)
「胎内記憶は非科学的」という批判も少なくないが、池川さんは「今は世界25か国で胎内記憶が報告されている」と説明する。胎内の思い出は生きていくのに役立つのかもしれない。
※女性セブン2019年10月31日号