免疫を獲得する1つの方法がワクチンの接種だ。ドナルド・トランプ米大統領は5月15日の記者会見で「ワープ・スピード(ものすごい速さ)作戦」をぶち上げ、年内にワクチンを開発・製造・供給するつもりだと訴えた。

 安倍晋三首相も5月6日、ニコニコ生放送に出演し、「東京オリンピックを成功させるためにも、治療薬、ワクチンの開発は日本も中心になって進めたい」と語った。だが、一方でワクチンの製造について、否定的な見解も多い。

 前出の番組で安倍首相と共演した京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長は、「ワクチンを(東京五輪開催予定の)1年後に準備できるかというと、幸運が重ならない限り難しい」と述べ、首相の楽観的な見通しを一蹴した。

 WHOで緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏も13日の記者会見で、「コロナが消滅しない可能性がある」と述べた。つまり、ワクチン開発が不可能である恐れを指摘したのだ。なぜワクチンの製造は難しいのか。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんの解説だ。

「そもそもワクチンの予防効果を調べるには、まずコロナに感染していない人にワクチンを打ち、その後にコロナと似たようなウイルスに感染させて経過を調べるという手順が必要で、膨大な手間と時間がかかります。また最近はコロナウイルスにワクチンがくっつくと、白血球がウイルスに感染して症状が悪化する『抗体依存性感染増強(ADE)』という現象が起こることがよく指摘されます。

 実際にコロナウイルスが原因である重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン研究でもADEが指摘されており、両方ともまだワクチンができていません」

 数々の難題をクリアしてワクチンが完成したとしても、ずっと安泰なわけではない。

「ワクチンが完成しても、その後にウイルス自体が変異したら、ワクチンが効かなくなる。ワクチン開発の道のりはそれほど困難なのです」(前出・室井さん)

※女性セブン2020年6月4日号

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