北朝鮮の秘密警察である国家保衛部の工作員が携帯電話のブローカーになりすまして、脱北した家族がいる家庭を訪問し脱北者に電話をさせたあと、「脱北者と連絡をとるのは違法だ」として逮捕するケースが相次いでいることが明らかになった。
北朝鮮では新型コロナウイルスの感染拡大で、経済状態が極度に悪化し食糧不足が深刻化している。国内に残された家族は背に腹は代えられず、韓国などに行った脱北者に頼らざるを得ない状況であることを逆手にとった非情な手段だとして、一般市民の間でも、逮捕された人々に同情が集まっている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮の携帯電話ブローカーの営業システムは、中国のモバイルネットワークを利用し、中国製の携帯電話を使って、家族が脱北者と連絡をとることを手助けし、脱北者から送金を受けたあと、「連絡料」としての相応の代金を回収する仕組みだ。
しかし、北朝鮮当局は2020年1月に新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、中国の携帯電話網が利用できる国境地帯を中心に、北朝鮮国内の市民が海外の人々と接触することを禁止しており、それを破った場合、強制収容送りなどの厳しい罰則を科している。
このようななか、北朝鮮では最近、国家保衛部の工作員が電話ブローカーになりすまして、海外の親族に連絡しようとする市民を次々と逮捕しているという。
ウイルス感染が広まり始めたばかりのころは、政府が監視を強化していたため、ほとんど家族は脱北者との連絡を控えていた。しかし、経済状況が悪化し、食糧不足が深刻化すると、「このまま飢えて死ぬくらいならば、いちかばちか、脱北した家族に連絡した方がまし、これが発覚して厳しい罰を受けることになっても仕方がないとばかり、脱北者と再び連絡をとろうとする人が増えている」と北朝鮮国内の消息筋はRFAに明らかにしている。
市民らも国家保衛部がこのような手口を使うことを警戒して、本物のブローカーと偽物を見分けるために、秘かなネットワークを利用してブローカーの正体を見破ろうとしているという。