「貴の乱・白鵬版」の影響は?
こうした経緯があるだけに、八角理事長の還暦土俵入りの太刀持ち、露払いを伊勢ヶ濱親方やその弟子の照ノ富士に頼むことができなかったということか。二所ノ関一門の理事で事業部長、広報部長を兼務する芝田山親方は主流派だが、健康状態として杖がないと歩行できないため難しいという事情がある。
辛口評論で知られる武蔵川親方は元横綱ながら委員と出世が遅れている。八角政権下で久しぶりの日本出身横綱となった二所ノ関親方の稀勢の里は適任だろうが、そうなるともうひとりは同じく八角政権を横綱として支えた白鵬・鶴竜のモンゴル出身コンビのいずれかということになるが、「この2人に頼むことも現実的ではなかったのでしょう」とするのは別の協会関係者だ。
「鶴竜は主流派である時津風一門の陸奥部屋所属だが、白鵬の宮城野部屋は伊勢ヶ濱一門所属。しかも、一門内では来年2月の理事選に元大関・魁皇の浅香山親方を理事に推そうという話になっているなかで、白鵬が5月場所中に開催された一門の食事会で理事選出馬を表明したのです。一門内の親方衆は反対しているというが、出馬するする気満々で、まるで貴の乱の白鵬版。5期目を狙う八角理事長としても煙たい存在になっており、太刀持ちや露払いを頼む状況とは思えない。稀勢の里と鶴竜という組み合わせになると、優勝回数45回の白鵬を外したことが目立って違和感しかないので、部屋の弟子2人を指名したとみられています」
7月場所では白鵬の弟子として、19歳10か月での新入幕を果たした伯桜鵬(落合改め)が幕内の土俵に登場する。遠藤に並ぶデビューから所要3場所での史上最速の新入幕で、10代の日本出身力士としては稀勢の里の18歳3か月に次ぐスピード出世だ。さらに活躍すれば白鵬の出世レースのアシストにもなると見られているが、今後、八角理事長を頂点とする協会の勢力図がどう塗り替えられていくのか、注目となる。