伊勢ヶ濱部屋と陸奥部屋の「処分の違い」
相撲協会には5つの一門があるが、“少数派閥”にあたる高砂一門の統帥である八角理事長は、出羽海、二所ノ関、時津風の各一門の支援を受けるかたちで政権を維持している。相撲ジャーナリストが言う。
「残る1つの伊勢ヶ濱一門は、統帥である伊勢ヶ濱親方が2010年の理事選で貴乃花親方が立候補を強行した“貴の乱”の際に支援に回ったことから、反主流派と位置づけられています。それもあって、元横綱として理事の立場にあった際も、ナンバー2の事業部長や広報部長などの要職に就くことができなかったとされています。
伊勢ヶ濱親方は2020年には番付や取組編成をする審判部長に就任したが、花籠理事(元関脇・大寿山)と藤島副理事(元大関・武双山)が編成担当に置かれ、2022年には佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)との審判部長2人体制になるなど、常にお目付け役がいる状態でした」
昨年12月に伊勢ヶ濱部屋で弟子2人の暴力行為が発覚した際には、伊勢ヶ濱親方は理事から役員待遇委員への2階級降格となった。これに対し、今年5月には協会ナンバー2で事業部長だった陸奥親方(元大関・霧島)の部屋でも弟子の暴行事件が発覚したが、6月の臨時理事会では3か月20%の報酬減額処分となるのみで、事業部長は辞任したものの理事にはとどまった。この処分の違いからも、「伊勢ヶ濱親方が反流派に位置づけられていることが浮かび上がる」(前出・担当記者)とされている。
「伊勢ヶ濱部屋の暴力絡みの不祥事が2017年の日馬富士による暴行問題に続く2度目だったとはいえ、陸奥部屋との処遇の違いは違和感がある。今回の陸奥部屋の件は暴行を受けた力士が週刊誌へ情報提供したことで発覚していますが、事前に陸奥親方から協会幹部に報告済みで協会内の処理にも問題があったケースだとはいえ、伊勢ヶ濱親方と比較して大甘処分だったと言われても仕方がないでしょう」(担当記者)