当時、高校の美術部に在籍していた山下さん。油絵が上手く、成績も良好だったことから芸術系有名大の受験を考えており、そのために芸大系の予備校や絵画の先生の元に通った。さらに両親は、見聞を広めるようにとヨーロッパへの短期留学も許してくれた。そうして、普通の高校生だった山下さんの世界が急激に拡がっていく一方で、社会人の年上彼氏の反応はひどく卑屈で小さく感じたという。
「なぜ俺のいうことを聞いて地元に残ってくれないのか、海外に行って外国人の彼氏を作っていないかとか、こんなに心の狭い人だったっけ?というようなことばかり言われて、気がついた時には完全に気持ちが冷めていました。後に共通の友人に聞いたところ、同級生の女子には相手にされないから年下ばかりと付き合っては年上ヅラしていると悪評ばかり。結局、一緒に成長しようとか、私の夢を応援するとか、そんな気持ちはなかったんでしょう。狭い世界にいる人だと感じました」(山下さん)
男性が年上、女性が年下の「年の差婚」や「歳の差交際」の場合、大人っぽいと思われていた男性が、どんどん子供っぽい存在になると、森田さんも山下さんも口を揃える。そして、交際当初は幼さの残る年下女性が成長し、価値観がどんどん大人に近づいていくにつれ、男性が勝手に「失望」することも珍しくないという。
妻に逃げられる不安は消えない
「いやあ……あまりに年齢が離れた交際や結婚は、周囲から見れば確かにキモいでしょうね(笑)」
東北在住の会社経営・松野翔太さん(仮名・50代)は、30代で当時高校卒業したばかりの妻と結婚。周囲からは「どうせ捨てられる」とか「相手は財産目当てだ」と相当なバッシングを受け、反対されたと振り返る。
「ほとんど女性との交際経験もありませんでしたが、趣味の車のイベントに行った時、当時高校生だった妻と偶然知人関係になり、交際するようになったんです。年下だから、こちらがタバコを吸ったり運転するだけで、大人な言動だと憧れてくれる。年上の俺が守ってやる、人生を俺に預けろくらいの気持ちでいたんです」(松野さん)
しかし、妻が20歳の成人式を迎える頃、松野さんにある思いをぶつけてきたという。
「成人式の日、みんなはまだ学生で綺麗な晴れ着でワイワイやっていますが、すでに子供を産んでいた妻は、フォーマルな服装を着て少しだけ式に参加し、酒も飲まずに帰ってきていました。数日後、妻が私に打ち明けたんです。私の世界はもっと広かったはずだと。決して結婚や出産を後悔しているとは言いませんでしたが、若く結婚したことで自分の可能性が途切れてしまったように感じたのだと思います」(松野さん)