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ポッカ社員 中国赴任で「つらい」と思わないようになる

 あなたにとって「誇り」とは? ノンフィクション作家の稲泉連氏が50人のビジネスマンに取材してまとめたレポート「誇り-だから私は今日も働く」を発表。

 その中で、 食品・飲料メーカー、ポッカの食品チームマネージャー・簗瀬尊弘(42)は、「誇り」について問われるとこう答えた。「僕にとっての誇りは、仕事を『つらい』と思うことをあるときから意識的にやめたことです。『大変だ』と思っても『つらい』とは思わない。似ているようで大きな違いがあるんです」

 彼には会社が自分の居場所だと明確に感じられずに悩んだ時期がある。

「99年、31歳のときのことです。上海に単身赴任して、マーケティングの仕事を命じられた。中国語も全く分からない中、ひとりで合弁相手先の事務所で働きながら、本当に強い孤独感を抱いたんです」

 大学の農学部を卒業してポッカに入社した際、彼は同社の研究所で商品の開発に携わる将来をぼんやりと思い描いていた。

「ところが、配属されたのは営業部門。大学時代の4年間は何だったのかと悩んで、最初の数年は何度も辞めようと思いました」

 だから上海への赴任の内示が出たとき、彼は「なぜ自分が……」という思いが再度生じるのを止めることができなかった。夜、中国語が分からないため、仕方なくマクドナルドで夕食をとり、少し離れたアパートにタクシーで帰る日々。合弁相手の企業には気軽に話せる仲間がおらず、仕事も何から手を付けていいのかが分からない。

「アパートにいても考えこんでしまって、なかなか眠れない。正直、ひどい会社だと思いました。でも、2、3か月経った頃、このままじゃダメだと思った。とにかく前向きになろう、と。『つらい』と思う感覚を捨ててしまおうと決めたんです」

 当時はまだ海外赴任体制が整っておらず、通訳探しから仕事に取りかかり、現地での市場調査を一から行なった。2年の間に同社の中国向けオリジナル商品企画をいくつか実現化させた。

「企画した商品の中には、いまも売られているものもある。そうして働いた中国での2年間は、自分の人生の大きなターニングポイントであり、一つの誇りですね」

※週刊ポスト2010年9月10日号

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