国内

上杉隆氏指摘の官房機密費問題 マスコミはなぜ追及しない?

 本誌・週刊ポストで今年12回にわたって掲載した、ジャーナリスト上杉隆氏による「官房機密費マスコミ汚染問題」キャンペーンは、大きな反響を呼んだ。しかし、その後一向に官邸もメディアもこの問題を追及する気配はない。

「官房長官時代に機密費を評論家に配った」という野中広務氏の証言をきっかけに、上杉氏と本誌取材班がメディアと政府の「共犯関係」を告発するキャンペーンを展開した(5月28日号~8月27日号)。官房機密費の配布先リストとされるメモ書きを入手し、実名が挙げられた政治評論家らを直撃。

 メモには、名前とともに盆暮れの年2回配られていたとされる100万円単位の金額も書かれていた。また、官邸秘書経験者らの証言をもとに、新聞・テレビなど記者クラブの政治部記者にも、様々な形で機密費が配られていた実態を明らかにした。上杉氏は新聞・テレビに内部調査を行なうよう呼びかけたが、黙殺されている。

 また、7月21日放送のTBS系『NEWS23X』でインタビューに答えた鈴木氏の「官房副長官を務めていた1998年の沖縄県知事選で、機密費から3億円が投入されていた」という証言を、TBSは野中氏の抗議を受け、鈴木氏に相談もなく、勝手に謝ってしまっていた。

 そんななか、元官房副長官として機密費のすべてを知る人物が洗いざらいを告白した。それは12月6日に収監された鈴木宗男・前衆院議員の「これだけはいっておく」―。収監直前、TBS報道の真相について、そして、官房機密費マスコミ汚染問題の実態について、上杉隆氏にすべてを語っていた。

上杉:テレビ、新聞がなぜ官房機密費を報じることをそこまで恐れるのか。鈴木さんはどう考えますか?

鈴木:そもそも機密費のことを最初にTBSで話したのは野中さんです。TBS側は、そのことで野中さんに対する変な義理立てのようなことを考えているのかもしれない。でも、それ以上に大事なのは、真実、事実を報道することなんですよ。

上杉:おっしゃる通りです。野中氏は機密費を「現職の記者に渡したことはない」ともいっていますが、この点については?

鈴木:それは違いますね。官房長官番の人たちが栄転するとか、転勤するというときには、必ずそれなりの気持ちを届けていますよ。

上杉:額はどれくらいですか?

鈴木:5万円とかYシャツの仕立て券とか。それはまあ、私は社会通念上という感覚でいますが。記者さんと懇談したときでも、仕立て券をつけたりする。お土産、それにお車代をつけるわけです。

上杉:全くないというのは 弁ですね。なぜそこまで嘘をつくのか。不思議なのは、野中氏は逆に、フリーとか雑誌の編集者には渡しているという。でも私が取材したところ、誰ひとり野中氏からもらったという話を取れなかった。

鈴木:野中さんは評論家のなかに、1人だけ返してきた人がいたといって名前を挙げていますけれども、他の人にも50万円、100万円が渡っているわけです。ランクがあって、そのリストはちゃんと申し送りされている。なかには「ランクを上げてくれ」という人もいるんです。

※週刊ポスト2010年12月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン