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電波有効利用のための制度「電波オークション」の頓挫理由

「電波オークション」を御存じだろうか? これは、現在テレビ局などが格安で利用している電波を競売にかけることで有効利用し、かつ、新規事業者にも電波を開放する制度である。2009年のマニフェストで民主党は電波オークションの導入を掲げていたが、今国会に提出される予定の電波法改正案から電波オークションは抜け落ちている。

 それにしても、閣議や政務三役の決定を経たはずが、なぜこんなにあっさり覆ってしまったのか。そこには、総務官僚たちの猛烈な反対があった。

 総務省は、電波を割り当てた事業者(テレビ局や携帯電話会社)から年間642.8億円(2009年度)の電波利用料を得ている。これは税金でないために財務省が行なう国民への再分配の対象とならず、しかも電波法で使用目的を制限しているため、総務省がすべて自らの裁量で使える。名目は一般会計だが、「事実上の特別会計」となってきた。

 その金は何に使われているのか。総務省が公表している電波利用料の使途の内訳を精査すると、すぐに明らかになる。

 地上デジタル放送への移行には、周波数変更に伴い「アナ・アナ変換」と呼ばれる作業が必要になる。この対策事業に、電波利用料からトータル1600億円が投じられている。これを独占的に受注したのは、社団法人・電波産業会。総務省の天下り団体の一つで、専務理事には旧郵政省電波研究所主任研究官が名を連ねている。

『新・電波利権』(アゴラブックス)の著者で経済学者の池田信夫氏はいう。

「総務省にとって電波利用料は、天下り先の特殊法人などにばらまき、所管企業にいるOBに便宜供与して、いうことを聞かせる逆賄賂の財源なのです。総務官僚はこの『隠れ特別会計』を取られたくなかった」

 ところが、電波オークションはこの仕組みをひっくり返す可能性を秘めている。民主党の情報通信議連メンバーとして電波オークションの導入を唱えてきた岸本周平・衆議院議員が解説する。

「電波オークションを導入すると、その収入は一般会計に入り財務省に取られることになる。総務省が自由に使えなくなる可能性が出てくるのです。また、オークションになると総務省が電波の割り当てを決め業者を選ぶという裁量権も失うことになる。総務省の役人からすれば、既得権益のためにオークションはどうしても阻止したかったのでしょう」

 また、別の民主党関係者は、「電波行政改革に熱心だった原口一博議員が総務大臣を辞めたのが大きかった。片山善博・現大臣は、旧自治省ラインで電波行政には明るくない。そこをついて総務省の役人が巻き返しを図ったのではないか」と推測する。

※週刊ポスト2011年2月18日号

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