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「HIV感染者だからモテる」というジレンマから生まれる愛

100人以上のHIV感染者に取材した渾身のルポルタージュ『感染宣告 エイズなんだから、抱かれたい』(講談社)。作中に登場する主人公たちの中で、著者である石井光太さん(33)が、特に印象深いというのは、血友病患者で、薬害エイズ事件でHIVに感染してしまった慎一郎という男性だった。感染がわかったのが20代のとき。1才下の婚約者がいたが、慎一郎から別れを告げた。

しかし、その後、HIVだと知って近づいてくる女性、加絵が現れる。このふたりについて、石井さんはこう話す。

「慎一郎はHIVになってからのほうがモテるんです。彼に好意を寄せる女の子の中には、“死にゆく男性と恋をして傍に付き添いたい”と願って近づく人がいるんです。慎一郎はHIVであるがゆえにいい寄られることに葛藤を抱きながら加絵を愛します。一方、加絵は“私が彼を守る”と、家族の反対を押し切り、妊娠してでも周囲に結婚を認めさせようとします。ぼくはそんなふたりが愛おしくてなりませんでした」

死を意識した病気になるなかで感じる愛情は、愛情として評価できると石井さんは語る。しかも彼らは妊娠して、家族から反対されながらも説得して結婚する。HIVによって大きく人生を変えられながらも、感染者やその周りの人たちが、自らの道を選択しているのだ。

『感染宣告 エイズなんだから、抱かれたい』
講談社 1575円(税込み)

※女性セブン2011年2月24日号

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