国内

「京大カンニング犯は特別枠で合格を」と茂木健一郎氏が提案

京大カンニング騒動と前原誠司氏の外相辞任。相次ぐ2つの「事件」は、どちらも記者クラブメディアが抱える「虚報の構造」を浮き彫りにした象徴として、記憶されることになるだろう。茂木健一郎とジャーナリストの上杉隆、「既存メディア」と戦う二人の最前線対談である。

* * *
――京大入試のカンニング問題で予備校生が逮捕されたときに、茂木さんはツイッターに「日本のクズメディア、予備校生が逮捕されて満足か?(中略)恥を知れ。オレは、本当の日本の未来のために、闘う」と激しい口調で書きました。

茂木:あれはパンクな手法で、愛をもって腐したつもりなんです。テレビや新聞がこの予備校生を袋だたきにして、未来への希望を断とうとしていることに、激しい怒りを感じたのは事実ですが。今の日本のマスコミは、ちょっとでも誰かがミスをしたり、妙な事件が起きると、鬼の首を取ったかのように吊るし上げます。手法はいつも同じで、19歳の若者をまるで凶悪な殺人犯のように扱った。

あんな過剰反応をした理由は実はもう一つあって、新聞やテレビにしても、京大の総長にしても、自分たちの立場が脅かされていることにうすうす気づいてるからだと思う。

上杉:同感です。私もあの大騒ぎの裏にあるのは“恐怖心”だと思います。

茂木:そう。日本の大学入試って、本当にナンセンスですよ。日本企業の新卒採用では、どこの大学のペーパー入試を通ったかしか問題にしませんが、じゃあ、その入学試験はグローバル化した今の社会に合ってるのかというと、全く合ってない。そのことを今回の事件は象徴的に示しました。

今は、インターネットを使って世界中の人とつながりながら、情報を集め、総合して、独自の視点をいかに出すかが勝負になっています。ところが、京大の入試はネットとつながった瞬間に、有効性が失われるものであることが劇的な形で示されてしまった。時代に合っていないという事実に直面させられたのです。

あれがもし、手元にカンニングペーパーが置いてあったならこんなに大騒ぎにならなかったはず。「ヤフー知恵袋」というネットツールを使ったから大騒ぎになった。テレビや新聞の報道が異常過熱したのも、ネットツールが使われて、必要以上に恐怖心を呼び覚まされたのでしょう。

上杉:だいたい、カンニングがそんなに悪いのなら、今のテレビ局や新聞社で働いてる人間は、どうやって会社に入ったか思い出したほうがいい。少なくとも3分の1はコネ入社ですよ(笑い)。コネなどというカンニング以下の行為で会社に入った彼らが、よく批判できるなと思いますね。

私が議員秘書をしていたときに口利きした人の名前を掲示板に書き込みたいくらいです。しかし、京大にはひとりぐらい太っ腹な教授はいないのか。入試でこんな方法でカンニングやるなんて、なかなか考えたなと……。

茂木:特別枠で合格。

上杉:そう。彼は稚拙ではあるが、よりハッカーみたいなやつは、入れてもいいと思うんですよ。ルールは破ったのかもしれないが、犯罪とは思えない。

茂木:ウィキリークスの代表のジュリアン・アサンジだって、もし彼がIT企業の経営者なら間違いなく優秀ですよ。

上杉:そうですよね。だから、一人ひとりの個で判断すればいいわけですよ。

※週刊ポスト2011年3月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
高校時代には映画誌のを毎月愛読していたという菊川怜
【15年ぶりに映画主演の菊川怜】三児の子育てと芸能活動の両立に「大人になると弱音を吐く場所がないですよね」と心境吐露 菊川流「自分を励ます方法」明かす
週刊ポスト
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
2020年に引退した元プロレスラーの中西学さん
《病気とかじゃないですよ》現役当時から体重45キロ減、中西学さんが明かした激ヤセの理由「今も痺れるときはあります」頚椎損傷の大ケガから14年の後悔
NEWSポストセブン
政界の”オシャレ番長”・麻生太郎氏(時事通信フォト)
「曲がった口角に合わせてネクタイもずらす」政界のおしゃれ番長・麻生太郎のファッションに隠された“知られざる工夫” 《米紙では“ギャングスタイル”とも》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン