国際情報

中国の原発でも隠蔽体質の当局が放射能漏れ事故隠していた

 日本の大震災と原発事故は、中国・香港でも大きな関心を集めている。チャイナウォッチャーで国際教養大学教授のウィリー・ラム氏がレポートする。
 
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 東日本大震災で国際的な支援の輪が広がる中、香港の人々の支援運動が熱を帯びている。ジャッキー・チェンが発起人になって、チャリティイベント「愛は国境を越える」が行なわれ、映画スターや歌手ら300人が参加して会場を盛り上げ、2億7000万円もの義援金が集まった。香港の人々は日ごろからクールで他国のことには関心がないと思っていたが、このような熱い支援活動や義援金の額には正直驚いた。

 ただ、やはり香港人らしいと苦笑したこともある。それは、塩の買い占め騒ぎだ。福島第一原発の事故で、塩が放射能を防ぐというデマが流れたため、香港の人々が塩の買い占めに走ったのである。

 デマかもしれないと思っていても、香港人にとっては深刻にならざるを得ない事情がある。香港から約50㎞東方の大亜湾には大亜湾原発と嶺澳原発の計4基の原子炉が稼働しており、しばしば事故が伝えられているからだ。最近では、2010年5月以降で3件もの放射能漏れ事故が報告されているが、原発を管理している中華電力では「市民への影響はない」として、事故公表はいずれも発生から2週間以上が経過していた。

 これらの事故が明らかにされたのは、大亜湾の原発で生産された電気は香港で消費されることから、香港の会社も原発の管理に携わっており、香港政府に事実関係を報告したためだ。

 しかし、中国の原発は国有企業が管理しているため、「事故はしばしば隠蔽されている」と指摘されている。例えば、香港紙「明報」は2008年9月、「江蘇省の田湾原子力発電所で08年8月末、変圧器が爆発する事故が発生した」と伝えたが、当局は「爆発はなく、放射能漏れもない」と同紙の報道を否定した。

※SAPIO2011年5月4日・11日号

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