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「小沢派VS反小沢派」政争の具に堕ちていく「復興国債」

いかに被災地を復興させるか、与野党問わず、さまざまな案を提示しているが、その裏で、政争が繰り広げられようとしている。ジャーナリストの須田慎一郎氏が報告する。

* * *
東日本大震災の復興財源について、民主党内がきな臭くなってきている。内閣府の試算では、震災がもたらした被害は、インフラ面に限定しただけでも総額で16兆~25兆円にものぼるという。これは、阪神・淡路大震災の約10兆円を大きく上回る規模だ。

民主党の有力国会議員はこう証言する。

「阪神・淡路大震災の復旧、復興では、計3回の補正予算を組み合計3兆2000億円の資金を投じた。それをベースに考えると、今回は最低でも10兆円からの資金が必要となってくるはずです。問題は、その資金をどうやって捻出するかなのですが……」

阪神・淡路大震災の際には、「復興国債」を発行することで補正予算の財源を確保したが、現時点で1000兆円近い「国の借金」を抱えていることを考えると、さらなる国債発行が許されるのかどうか、各方面からそれを危惧する声が上がっている。

前出の民主党議員はこう言う。

「そこで浮上してきたのが、『国債の日銀直接引き受け』です」

この“日銀引き受け”は、財政法上で原則禁止されている。だが、彼はこう続ける。

「しかしこの財政法には抜け穴があります。ただし書きがあって、国会の議決の範囲内では日銀引き受けが可能、となっているのです」

もっとも当の日銀サイドはこの“日銀引き受け”については、コントロール不能のインフレに陥る、として絶対反対の立場を崩していない。ある民主党幹部もこう話す。

「民主党内でも岡田幹事長を筆頭に、『財政規律を失わせることになる』として反対派は多い」

しかしその一方で山岡賢次副代表を始め民主党内部でも賛成派が一定程度の勢力になっていることも事実なのだ。しかもこの賛成、反対は単なる論の違いだけではなさそうだ。再び、前出の議員の証言。

「党内における賛成派は、親小沢に色分けされている国会議員が多い。反対派には反小沢勢力が結集しつつある。見方を変えれば、“日銀引き受け”が党内政局に利用されかねない情勢となっているのです」

大連立の噂が絶えない中、何やら民主党の限界が見えてきたようだ。

※SAPIO2011年5月4・11日号

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