国内

大前研一氏 会食した他人事な工場被災の経営者に違和感覚える

 未曾有の危機に際して、リーダーはどうあるべきか。世界屈指の経営コンサルタントとして、これまで多数の企業や国家の「存亡の危機」を救ってきた大前研一氏が、有事に強いリーダーの条件を語る。

 * * *
 不測の事態が起きて危機に直面した時、リーダーに求められるのは「的確な判断力」と「素早い行動力」だ。模様眺めをしたり、周りの出方を窺っているようではリーダーたり得ない。

 その点、東日本大震災における菅直人首相の判断はあまりにも悠長で、すべての対応が後手後手に回ったわけだが、日本企業の経営者たちも似たり寄ったりだった。

 たとえば、ある会社の経営者と会食したところ、津波で工場が被災して復旧に2か月かかる、と他人事のように話していた。
 
 そんなに大変な状況なら、会食なんかしていないで現場に飛び、不眠不休で復旧作業の陣頭指揮を執るべきである。そうすれば2か月ではなく、2週間で復旧するだろう。

 ここで私が想起するのは、日本海海戦(1905年)での東郷平八郎らのリーダーシップだ。

 当時の大日本帝国海軍はロシアのバルチック艦隊に奇襲攻撃をかけるため、対馬の中央部を開削し、北九州側と韓国南西側とを繋ぐ延長約500mの運河「万関瀬戸」を突貫工事で造った。

 未曾有の危機に際しては、復旧や調整という発想ではなく、大胆に新しいものを生み出すくらいのオプションを考えて真に有効な対策を打ち出す。それが有事のリーダーの役割というものである。

※SAPIO2011年5月25日号

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