国内

なでしこ鮫島彩と鉢呂前経産相 「福島発言」の大きすぎる落差 

震災と原発事故を経験した日本に今、求められている力とは何なのか。そして、それが政治家にもっとも欠如している要素だとしたら……。ふたりの「日本人」から同じ日に発せられた言葉をもとに、作家で五感生活研究所の山下柚実氏が考察する。

* * *
9月10日。奇しくも同じ日に、同じ原発被災地・福島での経験をめぐって、二つの発言がなされ、その明暗がくっきりと分かれました。

一つは、鉢呂吉雄前経済産業相の「死の町」「放射能がつく」発言。「不適切な言動」の責任を取り辞任したことは、ご存じの通り。

もう一方は、なでしこジャパンのDF・鮫島彩選手。かつて福島第1原発に勤務し東電マリーゼに所属していた選手です。

鮫島選手は、五輪予選の過酷な日程で4試合にフル出場。疲労していたにもかかわらず、監督にあえて「最終戦に先発出場させてほしい」と懇願。ただ試合に出ただけではありません。積極的に走り、攻撃に参加し、力の限り守り戦った。

「被災地のことは常に考えている。私たちが諦めない姿勢を見せることで、少しでも何かが伝わればと思う」「今も厳しい状態で作業をしている人もいる。自分が知らなくても応援してくれる人もいる。そういう人の思いに届くように戦いたい」

自身の言葉を裏打ちするような真摯な鮫島選手のプレイに、観衆は心を強く揺さぶられました。

鉢呂氏と、鮫島選手。まったく同じ日に、同じ福島をめぐって、同じ日本人の口から出た言葉とはとても思えない大きな差。その二つを分けたものは何なのか? それは他者への「共感力」に他なりません。

人がどんな思いでいるのか。どんな状況に置かれ、何を感じて生きているのか。直接、知らない人のことであっても、他者の痛みや苦しみ、つらさ、喜びを想像して、自分の中に響かせる力。それを、エネルギーに変えていく力。

そして、結果的には、自分のためでなく他者のために、チームのためにそのエネルギーを使うことができる力。それが「共感力」です。

震災と原発事故を経験した日本に今、求められている力。それが、政治家にもっとも欠如している要素だとすれば……。

「つまづいたり ころんだり したおかげで 物事を深く考えるようになりました 」(『にんげんだもの』)というのは、野田首相の大好きな詩人・書家の相田みつをの言葉。では、つまづき続け、ころび続ける民主党の新しい内閣、その今後は?



関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン