ライフ

斎藤佑樹ゆかりの「太田焼きそば」一体どこまで自由なのか!

「太田焼きそば」はイタリアンレストランで食べられる

 有名人と縁のある食を紹介する「日本全国縁食の旅」。食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏が語る今回は、ハンカチ王子こと斎藤佑樹投手の出身地、群馬県太田市の「焼きそば」だ。

 * * *
 今年のペナントレースも、いよいよ終盤戦に突入した。「ハンカチ王子」として世間を湧かせたルーキー、斎藤佑樹投手が所属する北海道日本ハムファイターズもクライマックスシリーズ進出が濃厚となっている。

 斎藤投手の出身は群馬県太田市。県内で人口が3番目に多い、北関東地域有数の工業都市である。最近では秋田県横手市、静岡県富士宮市と並び、日本三大焼きそばの町としても知られている。しかしこの「太田焼きそば」は、実に不思議な焼きそばだ。何が不思議かというと、はっきりとした「太田焼きそば」の定義が存在しないのだ。

 一部には「極太麺で色の濃いソースが太田焼きそばである」という説もあるが、色が薄いソースを使う店もあれば、麺が細い店もある。具をふんだんに盛り込んだ一皿がウリの店もあれば、具はキャベツのみという老舗もある。もっと言えば鉄板焼きの店だけでなく、和菓子店や喫茶店、はたまた日用品を売っているような店で「太田焼きそば」に出会うこともある。地元民に聞いても「定義がないのが、太田焼きそば」と笑い飛ばされるが、それってアリなんだろうか……。

 そもそも、なぜ太田市が焼きそばの街になったのか。その起源は、第二次大戦後の高度成長期にある。太田市は中島飛行機の創業の地で、戦後、富士重工として再スタートを切ると、スバル360の爆発的なヒットにより、同社の労働需要が急増したのだという。

「その当時、秋田の横手など、もともとご当地焼きそばの多い東北各県から太田市への出稼ぎ者が太田に焼きそばを持ち込み、定着していったと言われています」(太田市商業観光課)

「安くてボリュームがある」と工場労働者に受け入れられ、市内には焼きそばを供する店が立ち並ぶように。2002年には市内で焼きそばを供する数十店による、「上州太田焼きそばのれん会」も発足した。

 最近では、のれん会の有志数店が「がんばれ佑ちゃん応援焼きそば」なるメニューを立ち上げ、市内の数店で供している。が、これも店によってバラバラ! 例えば「コーヒー&焼そばハウス欅」という店では、ウインナーやゆで卵で背番号18をかたどり、トッピングの海苔を芝生に、コーンを観客に見立てて球場を表現している。
 
 かと思えば、別の店ではハム入りの普通の焼きそばが目の前に置かれる。共通点と言えば具に日本ハムのハムが入っていることくらい……。

 ちなみに、市内には焼きそばを供するイタリアンレストランまで存在し、そこで供される「焼きそば」の麺は驚愕のパスタ! 山崎製パンの人気シリーズ「ランチパック」にも「上州太田焼きそば風」として進出するなど、太田焼きそばよ、いったいどこまで自由なのか!

 だが2007年以降「B-1グランプリ」に毎年出場しながら、三大焼きそばで唯一優勝経験がなく、最終選考でも一度もベスト10に残ることができていない。佑ちゃんと違ってこちらはまだ「持ってない」!?

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン