スポーツ

西武中村剛也 かつて肥満と診断され母子で学校に呼び出された

175センチ、105キロ。西武の「おかわりくん」こと中村剛也は、生まれた時からビッグな子だったという。今年48本のホームランを打ったホームランキングの生い立ちを振り返る。ルポライターの高川武将氏がリポートする。

* * *
猛暑の夏だった。1983年8月15日、大阪府大東市。最高気温38.5度の昼日中に、中村は産声を上げた。4295gのビッグな赤ちゃんは、ベビーベッドからはみ出しそうで「もう、お宮参りですか」と尋ねられた。

幼稚園で足のサイズが21センチ、靴は下駄箱の上に置いた。3個パックのプリンは一度で平らげ、食前食後には食パンをほお張る。祖父、祖母、姉、弟もいた中村家では、やがて一日一升の米を消費した。

少年野球チームの監督だった父重一についていき、5歳から野球を始める。動きは意外に俊敏で、ボールを捉える打撃センスがあり、やがて4番捕手が定位置となる。「ホームランバッターになれ」と口癖のように言った父は、一度も体型を変えさせようとはしなかった。

「野球の華はホームランでしょう。最近は空中戦がないからつまらない。皆が喜ぶのは遠くへ飛ばすこと。それには絶対に体重が必要です。やせたらアカンと」

大きくフォロースルーをとること、球をバットに乗せて運ぶこと……父子の目標はホームランを打つことにあった。一つの「事件」が起きたのは、小学3年のときだ。健康診断で肥満と診断され、母と共に学校から呼び出される。どんなものを食べているのか、生活態度はどうか……そんなことを聞かれた。3回目の呼び出しのとき、母は先生に啖呵を切るのだ。

「うちにはうちの育て方があります。運動もしてるし、健康上も問題ないです。剛也は赤ちゃんのときから大きかったから、今更どうもできません。もう、呼び出さないでください」

もちろん、学校の指導の目的が、成人病の予防であることはわかっていた。

「でも、差別じゃないですかって。細い子にもっと太れとは言わないでしょう。周りから、アイツは太ってるから保健室に呼び出されてると見られるのは……。私も変に頑固だから」

母久美は笑いながら振り返るが、子供の心理を考えれば、切実な問題だったろう。太っているのも一つの個性である。そう肯定した両親の下で、中村はすくすくと育っていく。

※週刊ポスト2011年11月11日号

関連キーワード

トピックス

「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
3年間に合計約818万円のガソリン代を支出していた平口洋・法務大臣(写真/共同通信社)
高市内閣の法務大臣・平口洋氏が政治資金から3年間で“地球34周分のガソリン代”支出、平口事務所は「適正に処理しています」
週刊ポスト
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
米大リーグ、ワールドシリーズ2連覇を達成したドジャースの優勝パレードに参加した大谷翔平と真美子さん(共同通信社)
《真美子さんが“旧型スマホ2台持ち”で参加》大谷翔平が見せた妻との“パレード密着スマイル”、「家族とのささやかな幸せ」を支える“確固たる庶民感覚”
NEWSポストセブン
モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
《交際説のモデル・Nikiと歩く“地元の金髪センパイ”の正体》山本由伸「31億円豪邸」購入のサポートも…“470億円契約の男”を管理する「幼馴染マネージャー」とは
NEWSポストセブン
高校時代の安福容疑者と、かつて警察が公開した似顔絵
《事件後の安福久美子容疑者の素顔…隣人が証言》「ちょっと不思議な家族だった」「『娘さん綺麗ですね』と羨ましそうに…」犯行を隠し続けた“普通の生活”にあった不可解な点
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン