国内

オリンパス 損失「飛ばし」組織ぐるみで行っていたとの指摘

巨額の損失隠しが発覚し、窮地に追い込まれたオリンパス。なぜこんな事態に陥ったのか、その裏側をジャーナリストの須田慎一郎氏がレポートする。

* * *
「今後の状況次第では、上場廃止は言うに及ばず、会社の存続自体が危ぶまれることになってきた」

オリンパスの取引銀行役員が、こう指摘する。

去る11月8日、オリンパスの高山修一社長が記者会見に臨み、これまでの「過去の企業買収は手続きも金額も適正」としていた説明を全面的に撤回し、問題とされる一連の投資案件に関して「(旧経営陣に違法性の認識は)あったと思う」(高山社長)という踏み込んだ発言をした。

証券取引等監視委員会(日本版SEC)の幹部が言う。
「今どきこんなことをやっている上場企業があること自体、大きな驚きだ」

そもそもオリンパスの蹉跌は、1990年代にまでさかのぼる。積極的に“財テク”を展開していた同社は、バブル崩壊によって多額の損失を抱え込んでいくことになる。

「当時の一部経営陣は、そうした“損失”を簿外に移しかえました。『飛ばし』をすることで、財テク失敗による損失が表面化することを回避したのです」(オリンパス幹部)

そしてその「飛ばし」の受け皿として利用されたのが、海外に設立された複数のファンドだった。

「当初は、そうしたファンドを使って徐々に損失を圧縮していくつもりだった。結果的にそうした目論見は、物の見事に外れてしまったが……。この『飛ばし』の存在は、オリンパス社内にあっては秘中の秘だった」(オリンパス幹部)

この幹部によれば、「飛ばし」の管理は、オリンパス社内に設置された「事業投資審査委員会」が一手に引き受けていたという。

「その委員会のメンバーは、経営企画部、経理部、総務・財務部に籍を置く一部社員によって構成され、委員長は菊川剛前会長が長く務めていた」(オリンパス幹部)

こうした状況から判断しても、一連の「飛ばし」が組織ぐるみで行なわれていたと見て間違いないだろう。

「証取委もこれまでの内偵調査でそうした状況を既に把握していると考えてもらっていい」(証取委幹部)

このコメントからもうかがえるように、証取委の調査はかなりのレベルまで進んでいるのが実情だ。

「これまでにオリンパスからは相当数の内部資料、たとえば同社とファンドとの契約書などの提出を受け、すでにその解析作業に取りかかっている」(前出の証取委幹部)

いずれにしても証取委の強制調査着手、そしてその結果を受けての検察当局への刑事告発は、もはや時間の問題と見ていい。つまりオリンパスを舞台とした一連の不正経理疑惑は、一気に大型経済事件に発展していく様相を呈してきたと言えよう。

※SAPIO2011年12月7日号

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン