国内

橋下徹氏生家近くの女性「彼がここで育ったことを誇りに思う」

橋下徹・前大阪府知事の「出自」が週刊誌で報じられ話題になった。同氏が育った、新大阪駅から徒歩10分「同和地区」の風景はいまはどうなっているのか。作家の山藤章一郎氏が報告する。

* * *
橋下少年の過ごした団地は、路地の行き止まりにあるように見えて、ぐるっとロの字型にまわり込む位置にあった。

ロの字のなかに、枯草が生えている遊び場と本箱を連想させるふたつの小さな団地がある。老朽化した外壁が、雨降りのむこうによけいにくすんで見える。真ん中に薄暗がりの階段がつき左右に部屋が分かれたつくりの3階建て、6室の団地である。

6室とも、日避けのよしずのすだれを窓に吊るしている。いちばん上の2号室2DK、橋下少年はここで妹、保険の外交員をする母と3人で暮らした。

父は、息子が小学校2年のときにガス自殺したと報じられている。府営住宅の抽選に偶然当たって、入居できた。一家は同和とは無縁で、母は、地域から〈同和対策〉による家賃補助を勧められたが受けなかったという。

この母は『週刊ポスト』(10年8月13日号)で、それまでの「ハシシタ」姓を「ハシモト」に変えた心情を洩らしている。

「この子は、橋の下を歩むのではなく、橋のもとを見て注意深く生きていくように、と願って変えました」

部屋にはいまも人が住んでいる。まわりに同じような団地がひとつ、さらに周辺に中層のマンションや低い軒並みがつらなる。

〈飛鳥地区〉からは、高名な上方漫才師、芸能人が多く出ている。プロスポーツ、やくざの世界に身を投じた者もいる。

新大阪駅開業の2年前、北陸からこの地に来たお婆さんは、橋下の住んだ団地からほど遠くない場所で雑貨屋を営む。

「そらあんた、来た当時はボロボロのバラックばっかり、それが府営住宅やで。わたいも、土地が安いんでここに来たのやが。ところがあんた、新幹線さまさまや。あれが通って、ええ住宅がボコボコできた。広い道路もな、できた。

昔の面影ありません。そらもう変わりましたで。しかし、土地は変わってもあんた、人は変わらん。あいかわらず、あくどい差別をするもんがおって、苦しむもんがおって。

苦しむのはな、市の清掃局の仕事してる人、多かった。大八車牽いてな。コルタン(コールタール)塗りの木箱に入っとる生ごみを市のカゴにばさっと放りこむねん。

木箱にハエが卵産む。ウジ湧いて、ものすごい臭いや。あとは、肉処理の仕事や。くさいとか汚いとか、はたから文句をいう。しんどい辛い仕事をしてもろうてるのに、差別する文句たれる。

人いうのはむごいもんでんなあ、あんた。まあ少しずつ良うなってきたが。いまも差別あるで。これをなんとしても、なくさなあかん。

そうや、あっこの橋下はんの住んだ団地は変わっとらんわな。ここへ選挙応援に来たとき、解放同盟のこと、ここの出身やいうこと、母校のこというてな。肌で被差別を体験した知事や。わたいは橋下さんがここで育ったいうことを誇りに思うてます」

※週刊ポスト2011年12月2日号

関連記事

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン