国際情報

米金融危機 まずリーマン・ブラザーズ救えば安く済んでいた

欧州債務危機の拡大懸念が強まっている。欧州各国は、どんな手を打てばいいのか。かつて米国で起きたリーマン・ショックの時のケースを例にとり、大前研一氏がそのポイントを解説する。

* * *
私は2008年のリーマン・ショックが起きた際に、金融危機が次々に飛び火する現象は英語の「ウルフ・パック(狼の群れ)」という比喩が最適だ、と述べた。

ウルフ・パックは餌を獲ることができなくて飢え死にしそうになると、最も弱った1頭を他の狼が襲って共食いをする。つまり、群れの中で少しでも弱みを見せたら、その瞬間に仲間に襲われる、という状況を意味している。

金融危機はそれと同じで、一つの問題が解決しても、集団不安心理によって「次はどこか?」となるから、どこまで行っても切りがないのである。

では、どうすべきなのか。最初に弱った1頭、すなわち最初に債務危機に陥った国を圧倒的余裕をもって救わねばならない。なぜなら、それが一番ダメージが少ない救済策だからである。

たとえば、リーマン・ショックの時、アメリカ政府はリーマン・ブラザーズを潰してしまった。その結果「次はどこか?」という疑心暗鬼が広がり、保険世界最大手AIGへの公的資金注入、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディーマック(連邦住宅貸付抵当公社)の実質国有化などで莫大な資金が必要になった。それよりは最初にリーマン・ブラザーズを救っておいたほうが、はるかに安く済んだはずなのだ。

また、1997~1998年のアジア通貨危機は、タイからマレーシア、インドネシア、韓国、ロシアへと波及し、韓国はIMF管理になってロシアはデフォルトした。金融危機は、飛び火すればするほど火の手が大きくなっていくのである。

欧州債務危機も同様だ。金融危機の第一フェーズは流動性危機(資金不足)である。国家の場合も、ある期限までに必要な資金が入らないと、国債の償還・利払いや国家公務員の給料の支払いなどができなくなってデフォルトに至るわけだ。

※週刊ポスト2011年12月16日号

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン