ライフ

日本のアダルトグッズ TENGA以外衰退の理由を女性作家解説

日本のアダルトグッズについて語る北原さん

文筆家で女性用アダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表の北原みのり氏が書く「ガラパゴス化した日本のセックス」。第二回目は、アダルトグッズでもっとも売れているモノを取り上げます。

* * *

今、日本のバイブは、世界ではまるで売れていない。1970年代、ペニスに生えたオジサンとオジサンに抱きつく熊、という衝撃的な二股デザインと、繊細なモーター力で女のオナニーレボリューションを起こした日本のバイブですが、今や世界で売れているのは、TENGAだけ。日本といえば、バイブの国だったのに……。

ちなみに、今、一番売れているジャパニーズバイブは、アダルトグッズではなく、HITACHI製の真面目なマッサージャーです。特にアメリカのバイブ屋では100%と言っていいほど、HITACHIの電マを売っている。アメリカ人の女友だちは、「I LOVE HITACHI(ハイタチーと発音してます)!!!!」と心の底から言っていたけれど、彼女は日立が家電から原発まで作る日本を代表する企業だとは知りませんでした。

まぁ、とにかく。日本のアダルトメーカーがつくるバイブが、世界の市場から消えているんです。

この10数年で、世界は激変しました。バイブ屋もインターナショナルを求められる時代です。ガード下で酔っ払い相手にクマンコを売る時代は終わったのです。

その先鞭を付けたのはヨーロッパでした。セックスグッズに投資する資本家や、セックスグッズにキャリアをかけるデザイナーなんて人たちが、21世紀になりどんどん出てきました。彼らは資本家からお金を集め、中国に工場を設立し、キッチン用品などを手がけるデザイナーを雇い、デパートで売れるようなセックスグッズを、どんどん作りはじめました。

一方日本では、バイブは公序良俗に触れる危険物。決して巨大なお金が動く世界ではなく、スタイリッシュなデザイナーがデザイナー魂を賭ける場所でもない。日本のバイブ屋は、たいていこう言います。

「オシャレなバイブより隠微な方がいいんだよ。女も本当はそれを求めているんだよ」

たかがバイブ、たかが道具でしょ? 素材がよくて、ウォータープルーフで、充電式で、デザインもクールで、1年間のメーカー保証がついている家電なみのバイブの方がいいに決まっているっ! と私などは思うのですが、なぜかバイブそのものにエロティシズムを投影する人が、とても多い。

まるで「下品なものをヴァギナに入れている」という状態に興奮するために、バイブが作られているかのように。

一方、TENGAはどうでしょう。男性が使うオナホールのTENGA。プニプニの素材にこだわり、最高級のローションにこだわり、見た目にあれだけこだわった男向けのオナニーグッズ。TENGAはそのこだわり故に、世界的な成功を収めました。

世界中のアダルトグッズショップで、TENGAはレジ前に置いてあります。男は、もう、ホール物に女のリアルを求めない。女を求めていない。それはまるでステーショナリーのような、シンプルなグッズ。生理用品のような軽やかさ。オーガズムは日常茶飯事なのです。

そして、私の疑問はまた再び。なぜTENGAの国の人たちが、バイブにはグロテスクさと猥雑さとリアリズムを求めようとするのでしょう。そこには、女の欲望や、女の視線は入っているんでしょうか。

日本は世界で唯一、バイブよりも、男性向けオナニーグッズの売り上げが上回る市場、と言われてます。つまりは、カップルで使うバイブや、女だけで使うバイブよりも、男一人で使うホール物やダッチワイフの市場の方が、断然大きい。

一つ数百円から高くて2000円くらいのオナホールが、アダルトグッズ全売り上げの7割を占めていると言われています。女性の気持ち良さや、カップルで遊び楽しさを追求するバイブより、男のオナニーを完璧に満たすものに全力を注ぐ。それが今の日本の男的、な現実なのかもしれません。


関連キーワード

関連記事

トピックス

復帰会見をおこなった美川憲一
《車イス姿でリハビリに励み…》歌手・美川憲一、直近で個人事務所の役員に招き入れていた「2人の男性」復帰会見で“終活”にも言及して
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
公設秘書給与ピンハネ疑惑の維新・遠藤敬首相補佐官に“新たな疑惑” 秘書の実家の飲食店で「政治資金会食」、高額な上納寄附の“ご褒美”か
週刊ポスト
高市早苗首相(時事通信フォト)
高市早苗首相の「官僚不信」と霞が関の警戒 総務大臣時代の次官更迭での「キツネ憑きのようで怖かった」の逸話から囁かれる懸念
週刊ポスト
男気を発揮している松岡昌宏
《国分騒動に新展開》日テレが急転、怒りの松岡昌宏に謝罪 反感や逆風を避けるための対応か、臨床心理士が注目した“情報の発信者”
NEWSポストセブン
水原受刑者のドラマ化が決定した
《水原一平ドラマ化》決定した“ワイスピ監督”はインスタに「大谷応援投稿の過去」…大谷翔平サイドが恐れる「実名での映像化」と「日本配信の可能性」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン
現在は三児の母となり、昨年、8年ぶりに芸能活動に本格復帰した加藤あい
《現在は3児の母》加藤あいが振り返る「めまぐるしかった」CM女王時代 海外生活を経験して気付いた日本の魅力「子育てしやすい良い国です」ようやく手に入れた“心の余裕”
週刊ポスト
熊本県警本部(写真左:時事通信)と林信彦容疑者(53)が勤めていた幼稚園(写真右)
《親族が悲嘆「もう耐えられないんです」》女児へのわいせつ行為で逮捕のベテラン保育士・林信彦容疑者(53)は“2児の父”だった
NEWSポストセブン
リクルート社内の“不正”を告発した社員は解雇後、SNS上で誹謗中傷がやまない状況に
リクルートの“サクラ行為”内部告発者がSNSで誹謗中傷の被害 嫌がらせ投稿の発信源を情報開示した結果は“リクルートが契約する電話番号” 同社の責任が問われる可能性を弁護士が解説
週刊ポスト
上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン