ビジネス

所得税に限れば千数百万人が非納税者 低所得者に優しい日本

国の財源不足が話題に出るたびに持ち出されるのが、消費税、所得税の増税論議だ。では、これら日本の税は国際的に見た場合、高いのだろうか。中央大学法科大学院教授の森信茂樹氏が解説する。

* * *
税負担の内訳を国際比較すると、所得税が最も低いのは日本で、次に低いフランス(10%)と比べ約3%も低くなっています。消費税は米国に次いで低いことがわかります。他方で法人税を見ると、ほぼ同じことがわかります。このように日本は個人への税は諸外国の中で低いことがわかります。

では、日本も諸外国並みに税を上げればよいかというと一概にそうはいえません。

税の負担を考える時に、重要なことは、課税ベース(底面積)と税率(高さ)の双方を考えることです。底面積×高さで税収・税負担が決まるのです。税収を増やそうと思った場合、課税ベースをそのままにして税率を上げる方法と、税率はそのままで課税ベースを広げるという2つの方法があります。

前者は勤労意欲の減少につながりますが、後者は、課税ベースを小さくしている各種控除や特例を見直すことになるので、公平感が上がります。そこで、「課税ベースが広く、税率が低い」税制が優れており、世界の税制改革もこの方向で行なわれてきました。

また、税負担の重さについては、日本の納税者の8割が所得税率5%と低く、英国では7.5割が約20%もの所得税を支払っています(図上)。さらに課税される最低所得もさまざまな控除により、夫婦子2人の給与所得者の場合261.7万円で、千数百万人が非納税者です。英国は課税最低所得が98.7万円(1ポンド=132円)、ドイツは236万円(1ユーロ=116円)です。税負担についても、日本が諸外国と比べ重いとはいえないことがわかります。

※『サラリーマンのための安心税金読本』(小学館)より

関連キーワード

関連記事

トピックス

二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
福地紘人容疑者(共同通信社)
《“闇バイト”連続強盗》「処世術やカリスマ性」でトップ1%の “エリート模範囚” に…元服役囚が明かす指示役・福地紘人容疑者(26)の服役少年時代「タイマン張ったら死んじゃった」
NEWSポストセブン
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン