国際情報

グーグル評 かつては「旧弊破壊」で巨大化後「世を混乱させた」

【書評】『グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ』
スティーブン・レヴィ著/仲達志・池村千秋訳/阪急コミュニケーションズ/1995円(税込)

* * *
本書は、数百人もの社員に取材し、“インサイダーの視点”でグーグルを描いたという意味で類書と比べて異彩を放つ。

2000年代半ばから「検索連動型広告」で莫大な収益を上げ始めたグーグルは、「Gメール」や「グーグルマップ」など次々に新サービスを繰り出し、情報の世界の覇権を握るのは時間の問題とされた。

しかし、何かが狂い始めた。「ストリートビュー」はプライバシーの侵害で非難され、世界中の書籍をデジタル化する「ブックサーチ」は出版社を敵に回した。

〈「まずやってみて、後で謝る」という哲学こそ、グーグルに成功をもたらしてきた要因だった〉

社員にとってやっていることは同じなのに、新興企業だった頃は「旧弊を破壊した」と喝采を浴び、大企業になると「世の中に混乱を招く」と非難されたのだ。

さらに別の事態も進行していた。ツイッターやフェイスブックなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が勃興し、グーグルは完全に出遅れた。なぜSNSを軽視したのか。

〈グーグルは(中略)、運営上の革新的アイデアについては世界でもトップクラスのコンピュータ科学者である上級幹部に依存する部分が大きかった〉が、その上級幹部にとっては「アルゴリズム(コンピュータで問題を処理するための手順)がすべて」で、人々の問いに答えを出すのは常にコンピュータであり、人ではなかった。

本書を読む限り、グーグルにSNSの遺伝子はあまりなさそうだ。もし再びグーグルがネット覇者に返り咲くとしたら、人と人をつなぐ関係をアルゴリズムで解き明かした時なのかもしれないが、果たしてそれは可能なのだろうか。

※SAPIO2012年2月1・8日号

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン