国際情報

モサド 重要施設破壊、科学者暗殺でイランを挑発し空爆狙う

 核開発を進めるイランに対してアメリカが追加の制裁を提案するなど対立が激化している。その中で、イランの核兵器の脅威にさらされるイスラエルも空爆を準備していると言われている。しかしそれにはアメリカの支援が不可欠だ。果たしてイスラエルによる空爆はあり得るのか、落合信彦氏が解説する。

 * * *
 私が知る限り、イスラエルが米軍にイラン空爆支援を要請したことは、前大統領であるブッシュの時代に2度あった。だが、ワシントンでもきってのタカ派である当時副大統領のディック・チェイニーは、首を縦に振らなかった。当時のアメリカにはイラクやアフガンの戦線があり、拡大する余裕がなかったのである。現在のアメリカにも厭戦ムードがあることは否定できないが、2012年は少し事情が違う。

 それが、11月の大統領選挙である。仮に投票日前にアメリカが武力行使に踏み切り、イランを屈服させることができたら、オバマ政権の支持率は跳ね上がる。そうなれば、強硬な対外政策というお株を奪われた共和党候補に、勝ち目はない。湾岸戦争に勝利した直後、当時のブッシュ・シニア政権の支持率が90%に達したことを、オバマが覚えていないわけがない。

 歴史を顧みても、アメリカでは、大統領選挙の投開票日直前の10月に、現役大統領が大胆な人気回復策を打つことが少なくない。「オクトーバー・サプライズ」というパフォーマンスである。対イラン開戦という「オクトーバー・サプライズ」は、オバマにとってこの上ない誘惑となる。しかし、オクトーバーまで待つ必要はない。イランの核兵器開発が急激なピッチで進んでいるからだ。

 巧みなのはそうした事情を利用しようとするイスラエルだ。彼らはいつまで経っても空爆にゴー・サインを出さないアメリカに対して業を煮やしている。だからこそ、イラン人核科学者の殺害を続け、アメリカ大統領選挙のタイミングに向けて米・イランの対立を煽ろうとしているのではないか。この煽りを、アメリカ軍部が焚きつけている可能性が大いに高い。

 つい最近、アメリカ軍部の幹部が、イスラエルを訪問して、ネタニヤフ首相、国防相のバラク、イスラエル軍部、諜報機関・モサドのトップと話し合いを行なったが、内容は大体推測できる。イラン攻撃の場合の条件、タイミング、出口戦略。そして、攻撃はあくまでイランに先制させる。モサドは既に、何十人かのエージェントをイランに送り込んでいると言われる。彼らの役割はこれまで以上にイランの重要施設を破壊すること。そして科学者たちや重要人物の暗殺。

 これによってイランがキレればオペレーションは成功する。それまでは、表向きIAEA8国際原子力機関)とイランのコンタクトを続けさせる。イランもIAEAも話し合いでの解決を望むフリをするが、アメリカやイスラエル、特に後者は、もはやそれは無理であると確信している。

 ※SAPIO2012年2月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン