国内

東電50代原発土木技術者 脱原発視野に国民投票すべきと意見

 未曾有の原発事故から1年が経とうとしているが、東京電力の社員たちは、この1年、何を見て、何を感じてきたのか。そもそもあの悲劇は、なぜ起きたと考えているのか。福島第一原発で事故処理にあたった土木技術部門の50代社員に話を聞いた。

 * * *
 原発土木の技術者として、最も悔しいのは、会社側が2008年に「10mの津波」を試算していたにもかかわらず、それを現場に伝えていなかったことですね。報道によれば、当時の副社長には伝えられていたとか。10mならば、遡上高を考慮し、12~13mの対策を要求される。対応していれば、これほどの被害にならずに済んだと思います。ご存じのように設計の想定は5.7mでしたから……。

 3.11の当日は、フクイチ(福島第一原発)にいました。津波が来て、全電源を失った時から、メルトダウンという最悪の事態は想定できました。それからは文字通り不眠不休で作業を続けていたわけですが、今思えば、「情報の隠蔽」という体質が、この事態を招いてしまったと思います。

「10mの津波」の試算が出たのに現場に伝えられていなかったこともそうですし、「緊急時対策支援システム(ERSS)」の非常用バッテリーを、事故の際に未接続だったことを公表してなかったこともそうです。

「冷温停止」にしても、現場からすれば、「水をかけ続けなければならない冷温停止」などありえない。言葉の誤魔化しです。これは隠蔽体質の一つであり、それが不安を増幅しているとさえ感じます。

 電力各社は、数百億円もの追加投資をして、原発の再稼働をしようとしていますが、果たしてそれほどの投資が必要なのか。東京電力社員としてこんなことは大きな声では言えませんが、現状、原発なしでも電力は足りているのですから、脱原発も視野に、国民投票などを行なって判断すべきだと思います。
 
※SAPIO2012年3月14日号

関連記事

トピックス

東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
津波警報が発令され、ハワイでは大渋滞が発生(AFP=時事)
ハワイに“破壊的な津波のおそれ” スーパーからは水も食料品も消え…「クラクションが鳴り止まない。カオスです」旅行者が明かす現地の混乱ぶり《カムチャツカ半島地震の影響》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
牛田茉友氏はNHKの元アナウンサーだったこともあり、街頭演説を追っかける熱烈なファンもいた(写真撮影:小川裕夫)
参院選に見るタレント候補の選挙戦の変化 ラサール石井氏は亀有駅近くで街頭演説を行うも『こち亀』の話題を封印したワケ
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
大日向開拓地のキャベツ畑を訪問された上皇ご夫妻(2024年8月、長野県軽井沢町)
美智子さま、葛藤の戦後80年の夏 上皇さまの体調不安で軽井沢でのご静養は微妙な状況に 大戦の記憶を刻んだ土地への祈りの旅も叶わぬ可能性も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン