ライフ

3・11「黙祷」ツイートに意味ある? 震災イベント化に異議の声

 ちょうど1年前の東日本大震災では、ツイッターほかSNSの情報ツールとしての存在感がクローズアップされた。あれから1年、ノンフィクション・ライターの神田憲行氏は、そのツイッター上のあるつぶやきに、違和を感じるという。何度も被災地に取材で足を運ぶ神田氏が、問題提起する。

 * * *
 今年も3月11日がやってくる。ツイッターでは震災から3ヶ月後、6ヶ月後のたびに「黙祷」というツイートが流れたが、3月11日にも溢れるのだろうか。

 「黙祷」ツイートに何の意味があるのか、敢えて問いたい。

 そもそも「黙祷」しているときにツイートは出来無いし、それを呼びかけてもやる人はやるし、やらない人はやらない(出来無い人もいる)。「震災を忘れないために」というかもしれないが、忘れるはずがない。結局、「黙祷」ツイートは、「震災から1年」という“イベント”に参加したいだけではないか。

 そう“イベント”なのだ。ネットでは政治家や有名ジャーナリストが、当日のイベントへの参加を呼びかけている。しかしパレードをしたり音楽を鳴らすことで、被災地の人たちの何が報われるというのだ。参加している人たちに「良いことをした」という満足感にひたらせ、逆に目の前の問題から目をそらせることになりはしないか。

 原発問題はいまだに解決されず、がれき処理は進まず、被災地の経済は沈んだままだ。宮城県下の高校生のうち10人にひとりは奨学金を申請している。彼・彼女らが高校を卒業したときに明るい未来を築けるように、我々大人は用意してあげているのか。震災をイベント化してはならない。被災者を悼む気持ちはそれぞれの胸の中にあればいい。

 もちろんメディアも3月11日だけ集中豪雨的に報道し、あとは知らんぷりという(ありがちな)態度は許されない。これはフリーライターといえどもメディアの末端に連なる私の自戒でもある。

 3月11日午後2時46分、私は黙祷を捧げている被災者の方たちを取材している予定だ。そのあと出張先のホテルに帰り、自分がこの1年、被災者の人たちにどれだけ役に立つ記事を書けたか、どれだけ寄付などの貢献が出来たか、振り返るだろう。毎年毎年、20年後でも30年後でも、3月11日はあの人たちにどれだけ貢献できたか振り返る。


関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン