ビジネス

リタイヤ後の資金 投資運用より資産管理として信託活用

 投資や資産運用というと、かつては“持てる者が、益々増やすためのもの”といったイメージであったが、現在では少額で始められる金融商品が増え、個人投資は一般的なものになってきている。老後の資金を増やすため、退職金を元手に投資運用を始めようと考える人もいるが、“リスクを負って、増やそうとするのはちょっと……”という人も多いだろう。

 しかし“少しでも増やしたい”と定期預金にしても、さして金利はつかず、生活資金として使うには、定期預金にしてしまうと面倒。そうかといって普通預金にすると、計画的に考えてはいるものの、つい使ってしまわないか心配になることも。そういった人にフィットしそうなのが、投資運用目的ではない、資産管理としての金銭信託や投資信託の活用だ。

 金銭信託は、信託財産として金銭で引き受け、信託終了のときに受益者に金銭で返還する信託のこと。据え置き期間以降は、いつでも必要な額だけ引出すことができるタイプが多く、定期預金に比べて生活資金として使いやすいといえるだろう。

 また投資信託にもいくつかの分類方法があり、そのうちのひとつが「収益分配方式」による分類。利益分配をせず、分配金を投資に回す「無分配型」、年に1度分配を受ける「年1回分配型」、2~6ヶ月に1回分配を受ける「年複数回分配型」、毎月分配を受ける「毎月分配型」がある。

 リスクを極限まで下げた元本保証などの場合、運用益の分配というよりも、投資金額を少しずつ切り崩すような形になるが、生活資金をきちんと確保する資産管理目的であれば、そうした“切り崩しをしつつ、でも、少しでも増える可能性のある形”を求める人にとって、検討対象となり得る。

 低リスクの投資信託を購入して、生活サイクルに応じた収益分配方式を選ぶことも可能だが、三菱UFJ信託銀行が3月12日に販売を開始した『ずっと安心信託』は、そうしたニーズに特化した金銭信託のメニューだ。

 信託金額は500万~3000万円、期間は5年~30年で“少しでも増やしたい”人向けに、分配を受けない「据置期間」を設定することも可能。生活費として必要な1回あたりの受取額、分配頻度(毎月分配~年1回分配)も、契約者が決めることができる。

 分配金の受取り口座は、契約者本人の名義であれば、系列銀行でなくてもOK、代理人設定をしておけば、ケガや健康状態といったトラブルで契約者本人が対応できない場合は、代理人が分配金を引き出すことも可能となっている。

 またリタイヤメントした人を意識しているのが、「第2受益者」の設定。死亡時に必要になるであろう、「葬儀費用」「相続税」といった一時金の受取りや、遺される家族の生活資金として分配対象者を登録することができる。

 こうしたタイプの資産管理に利便性を感じるのは、本人だけでなく、離れて暮らす家族といったケースも。

 警察庁が昨年5月に発表した「平成22年の犯罪情勢」を見ると、65歳以上の高齢者が被害者となった刑法犯被害件数は、13万7882件。被害件数順で見ると、窃盗が10万4751件(76.0%)、次いで詐欺が6569件(4.8%)、暴行1776件(1.3%)、傷害1723件(1.2%)、強盗が425件(0.3%)となっている。件数だけで見ると窃盗が最も多いが、高齢者が被害者となる(ターゲットとされる)割合の高い罪種は、詐欺が30.8%で1位。

 計画的に生活費としてお金は使えるが、生活資金を金銭信託や投資信託という追加引き出しに窓口などでの対応が必要な形で預けられていれば、オレオレ詐欺や悪徳リフォームといった被害のストッパーになる可能性もある。

 親が高齢になり、判断力が衰えたことを感じても、なかなか「資産管理をしてあげようか?」というようなことは言い出しにくい。しかし「資産管理のために、こういうものが便利みたいだよ」という話であれば、老後の生活設計について親子で話し合うきっかけにもなるだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
日本テレビの杉野真実アナウンサー(本人のインスタグラムより)
【凄いリップサービス】森喜朗元総理が日テレ人気女子アナの結婚披露宴で大放言「ずいぶん政治家も紹介した」
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン