ライフ

最新マインドコントロール SNSの「いいね!」から始まる

 春は入学・進学、入社・異動・転勤などで環境がガラッと変わる季節。大きな変化がある時、人は不安や孤独を感じるものだが、心を操ろうという輩は、そうした隙を突いてくる。カルト教団、霊能者、マルチをはじめとした悪徳商法……有名人でなくとも、マインドコントロールに遭遇する可能性はある。オウム事件で専門家証言や鑑定を行なった社会心理学者の西田公昭・立正大学教授が、その最新手口を解説する。

 * * *
 マインドコントロールを用いた新興宗教の勧誘や悪徳商法の手法は、時代の流れとともに変化するものだが、最近、新たな手口が見られるようになっている。

 7000~8000人の信者がいるとされる、ある新興宗教団体の最前線にいる信者の話では、フェイスブックやミクシィなどのSNSを使うのが、有効なのだという。

 たとえば、大学生を勧誘したい場合、SNSサイトで大学名の検索をかけると大学関係のコミュニティ(グループ)がヒットする。そこから、入学間もない18~19歳の学生をターゲットにするのだ。

 SNSには「いいね!」といった、相手の書き込みなどを称賛したり、関心を示したりできるボタンがある。ターゲットにいきなりメッセージ(メールのような機能)を送ると警戒されるので、まずはターゲットの書き込みに対し、この「いいね!」を押す。何度か繰り返すと、ターゲットは「“いいね!”をつけてくれた人はどんな人だろう?」と気になって、自分のページを見にきてくれるようになる。そこから交流を始めるというわけだ。

 ターゲットの日記に書かれてあることやコミュニティの情報から、興味のあることを話題にして警戒心を薄れさせ、徐々に近づいていき、リアルで会う機会を狙っていくのである。

 昔は、例えば大学では入学式や授業のオリエンテーション、サークルを利用して近づいたものだが、そんなことをするまでもなく、インターネットを用いて簡単に相手の情報を得ることができるようになった。SNSには、好きな音楽や映画といった趣味や、家族構成、住んでいる場所など、多くの個人情報が詰まっている。つまりターゲットにとって「趣味が合う人」を演じやすく、近づきやすいのだ。彼らからすれば“やりやすくなった”わけである。

 そもそも、マインドコントロールは洗脳と同義のように扱われることが多いが、厳密には別の概念である。

 簡単に言うと、身体的拘束など、外部からの物理的な力で相手の自由を奪ったうえで価値観・人生観を変えようとするのが洗脳で、暴力的なことをせずに社会心理的な手法を用いて人を誘導するのがマインドコントロールだ。

 ではマインドコントロールと、単純な騙りによる詐欺、恐怖心をあおる悪質な販売方法などとの区別がどこにあるかというと、“程度の問題”でしかない。

 すなわち、多額の財産を寄付という形で奪われたり、人生を狂わされたり、殺人さえも含む反社会的な行為をさせられたりするのがマインドコントロールであると言える。ただし、どこまでが抗えない支配だったのかの境界線ははっきりと引けないため、事案によっては摘発が難しい実情がある。

※SAPIO2012年4月25日号

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン