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「高齢者はガムを噛むと記憶力アップする」と歯科大学が解明

 白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏によれば、咀嚼は高齢者の認知機能を保つ働きがあるという。以下、白澤氏の解説だ。

 * * *
 最近、咀嚼それ自体に認知機能を保つ働きがあることも明らかになっている。神奈川歯科大学の小野弓絵准教授は、被験者に2分間チューインガムを噛ませた後、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を使って脳の活性化部位を検討したところ、高齢者では記憶活動に伴う海馬の活動領域が拡大していたのである。

 高齢者と若者にガムを噛みながら記憶テストを受けてもらうと、若者ではガムを噛む時と噛まない時では、記憶テストの正答率に差がなかったのに対し、高齢者に記憶テストを受けてもらうと、ガムを噛むことによって正答率は上昇した。

 チューインガムを噛むと交感神経が活性化し、脳の運動野・感覚野・小脳などの顎運動に関わる脳の部分のみならず、前頭前野や島皮質といった高次機能をつかさどる部位も活性化することが脳のイメージ解析で分かった。

 前頭前野は人格や社会性に深く関わっている部位なので、機能が低下すると、怒りっぽくなったり、時には反社会的行動が出現したりする。島皮質は痛みの体験や喜怒哀楽、不快感、恐怖などといった基礎的な感情の体験において、重要な役割を果たしている。そのため、島皮質の機能が低下すると主観的な感情の体験である気分をコントロールできなくなるのだ。

 咀嚼を習慣化している人の認知機能が保たれ、感情が豊かである理由の一つが解明された。高齢期になると、周囲の刺激を感知する力(感覚入力)が低下するが、咀嚼はそれを補い、錆び付いた神経回路を活性化する「脳のジョギング」のようなものなのである。

※週刊ポスト2012年4月13日号

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