国内

AIJが食いつぶした厚生年金基金は「ジリ貧状態」と専門家

 2000億円もの年金資金を“消失”し、国会での追及が続く投資顧問会社「AIJ投資顧問」問題。うそばかりの運用報告書をつくっておきながら、「だました認識は一切ない」と反省ゼロのAIJ・浅川和彦社長(59才)の姿を見て、さしもの国会議員もあきれるばかりだ。社会保険労務士で“年金博士”として知られる北村庄吾さんはこう指摘する。

「AIJ問題はこの40年間で企業年金が崩壊したことを象徴しています。他人事ではありません」

 AIJが預かり、食い物にしたのは企業年金と、厚生年金の一部だった。

「企業年金は退職金制度の一環として多くの企業が採用しています。まずは自分や夫の会社に、企業年金制度があるかどうかを知っておくべき。会社の人事・総務に問い合わせれば、老後にもらえる額の目安も教えてもらえます」(前出・北村さん)

 企業年金のうち、将来もらえる年金が消えてしまう危険があるのは、「厚生年金基金」(以下、厚年基金)だ。企業年金加入者のうち3分の1にあたる約450万人が加入している。

「厚年基金は、企業年金だけでなく、本来、国に納められる厚生年金保険料の一部を預かって運用します。これを『代行運用』といいます。制度ができたのは40年以上前。当時は高度経済成長時代で、大きな金額を運用するほど、大きくお金を増やせるというメリットがありました」(前出・北村さん)

 多くの厚年基金は、年金受給者に年利5.5%で運用して、将来の年金額にあてると約束した。しかし、1980年代後半にバブルが崩壊。5%以上あった金利は1%台に急落。金利で思ったように稼げなくなったが、年金受給者には、約束した高い支給額を払い続けたため、多くの厚年基金が財政難に陥ってしまった。

「そこに“救世主”として現れたのが高利回りを約束するAIJでした。100を超える厚年基金が一攫千金をめざしてAIJに飛びつくようにして運用を依頼し、結果的に2000億円以上の大損害を負ったのです」(前出・北村さん)

 特定社会保険労務士の稲毛由佳さんは、「そもそも厚年基金は、AIJにかかわっていなくても危ない」という。

「危ない運用に手を出していないというだけで、ジリ貧の状態です」(稲毛さん)

※女性セブン2012年4月26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン