かつて新人が大量採用されていた時代には「落ちこぼれの中に伸びる人材がいる」などともいわれた。採用枠が減ったことで、そうしたユニークな人材が門前払いされてしまっているのもたしかだろう。
だが、少なくとも新入社員たちは、難関を突破してきた優秀で真面目な人材であることに間違いはないはず。彼らを伸ばすにはどうすればいいのか。
就活に詳しく、『就活のバカヤロー』(共著・光文社新書)などの著書のあるライター・石渡嶺司氏が指摘する。
「上司の世代には『話せばわかる』という考え方がありますが、『いってもわからない』という前提で接することが鉄則です。そのうえで、『なぜそうしなければならないか』ということを論理立てて丁寧に説明する。
その理屈がしっかりしていれば、意外に『そういうものなんですね』と素直に従ってくれます」
「正解」があるのが当たり前と思っている彼らが、「それが正解なのか」と納得できるように説明する。そのうえで実践して見せれば、「なるほど」と納得し、そうなれば飲み込みも早いそうだ。やれやれ。
コーチングの専門家で『えっ、ボクがやるんですか?』(幻冬舎)の著者・播摩早苗氏も、新入社員には彼らなりの論理があることを理解すべきとしたうえで、こうアドバイスする。
「彼らは悪気があってやっているわけではないし、真面目すぎるがために変な言動になってしまっていることもある。
上司にとっては大変でしょうが、まず彼らの考え方や思いをしっかりと聞いてあげること。そのことで信頼関係が生まれ、上下関係も正しく形成されていくはずです」
大切に扱ってくれていると感じれば、上司に対して心を開き、いうこともきくというわけだ。
人事育成コンサルティング会社の代表を務める前川孝雄氏は、新入社員は「攻略世代」でもあると話す。そこを上手に利用すれば、うまく働かせることができるという。
「例えば1週間かかる仕事を任せる場合、1日ごと、1時間ごとというようにスケジュールを細かく分け、それぞれの段階での達成レベルを提示する。その要所要所で目標がクリアできているかどうかを確認し、達成できていれば『よくできた』とほめることが大切です」
ゲームでステージを次々にクリアしていくがごとく、彼らを仕事の“攻略”に向かわせるわけだ。そのほうが新入社員にとっては仕事がしやすいし、目標を明確に設定することで、彼らの“やる気”を引き出すこともできるという。
※週刊ポスト2012年4月27日号